ミュージシャンの三宅洋平氏の選挙運動がドキュメンタリー映画『選挙フェス!』になった。2013年7月の参議院選挙で緑の党から出馬した三宅氏は、演説行脚を「選挙フェス」と称し、17日間の選挙運動期間に全国26カ所を巡った。「政治をマツリゴトに」と訴えてライブ形式のスピーチで聴衆の心を捉え、最終的に落選候補最多の17万6970票を獲得した。7月4日の映画公開を前に、監督・撮影・編集を務めた杉岡太樹氏に話を聞いた。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)
――三宅氏の選挙運動を映画化したきっかけは。
前作の『沈黙しない春』(2012年)の現場での出会いを機に、選挙期間のライブ撮影を依頼された。でも自分の作品にしたほうが面白いから報酬はもらわず、制作費を捻出して撮り始めた。
ピーアール映画ではないので挑発的な問いかけで怒らせた時もあったし、本人が嫌がるシーンも残した。ステージに立つ人が裏側を見せるのは覚悟が要るはずだが、最終的に可と判断してくれたのは、政治に関わりたい、世界を変えたいという彼の強い気持ちの表れだろう。
投票日までに自分が経験した感情のアップダウンや、彼に対するまなざしの変化を、114分の中で再構築した。彼の言ったこと、やったことを通して、あれだけの票を集めた理由を見せたかった。
――密着していて、支持層の広がりを実感できたか。
日に日に群衆が大きくなり、ファン中心から老若男女へ属性も広がっていった。撮影の合間に見るSNSでもあふれるような勢いで、現実とバーチャルの両方で膨らんでいくのを感じていた。終盤には本当にいろいろな人が来た。その盛り上がりを追体験してもらいたい。
街宣車を走らせず、たすきもかけず、島草履にTシャツ短パン姿で通した選挙運動は独特だった。彼は身をもって、選挙の高い敷居を一生懸命に下げようとしていたと思う。
――監督は三宅氏と同じ30代だが、投票に行かない若者について、どう思うか。
行きたくない人にも共感するし、責める気はない。大人が政治をタブー化して腫れもののように扱い、たまに出る人がいれば叩く姿を見せている限り、「ダサイ」と避けられても仕方ない。
投票率は、個人の意見や判断を尊重して調和していく土壌をつくっていけば、おのずと上がるのでは。叩き合いや個人攻撃をせずに「もっと本質的な話をしよう」と主張していく必要がある。
この思いこそ三宅氏と共鳴できた部分だし、そこが伝わる映画にしておけば、この先何年経っても自分の作品として責任を持ち続けることができると思った。