人道危機地域の女性団体への援助が急減、活動休止余儀なく

記事のポイント


  1. UNウィメンは人道危機地域で活動する女性支援団体を調査した報告書を発表
  2. 女性支援団体のうち、47%が6カ月以内に活動を停止する可能性がある
  3. 外国からの援助の大幅な削減が、女性支援の現場に深刻な影響を与えている

国連の女性機関UNウィメンはこのほど、女性支援団体への資金援助の現状をまとめた報告書を発表した。報告書によると、世界44の人道危機地域で活動する411の女性主導団体のうち、47%が今後6カ月以内に活動を停止する可能性がある。外国からの援助の大幅な削減が、女性支援の現場に深刻な影響を与えている。(オルタナ輪番編集長=吉田 広子)

報告書『限界点: 世界の人道危機における女性団体への海外援助削減の影響』
報告書「限界点: 世界の人道危機における女性団体への海外援助削減の影響」

支援削減の背景には、米国をはじめとする主要ドナー国による財政引き締めや政策転換がある。ジェンダー平等や女性の権利分野が後回しにされている現状も一因だ。さらに、ウクライナ、ガザ、スーダンなどで複数の人道危機が同時に発生し、限られた援助資金が分散している。

こうした状況を受けて、UNウィメンは2025年3月、現場の女性団体への影響を把握するためのグローバル調査を実施。その結果、90%の団体が資金面で大きな打撃を受けたと回答した。すでに多くの団体が、人員削減や主要サービスの休止を迫られているという。

報告書によると、特に、難民、LGBTQ、障がいのある女性、先住民族の女性など、複合的な困難を抱える人々を支援する団体からは、暴力の増加や児童婚、サバイバル・セックスといった有害な対応策が広がっているとの声が上がっている。

UNウィメンは報告書の中で、女性主導団体への直接的かつ柔軟な長期資金の提供を優先するよう国際社会に呼びかけている。「これは単なる資金の危機ではなく、権利と説明責任の危機だ」と警鐘を鳴らす。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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