記事のポイント
- サステナブルキッチンROSY(ロージー)は、5月末に店舗営業を終える
- 創業は2018年、オーガニックに関心の高いコミュニティーに愛されてきた
- 6月以降はケータリングに特化するが、ミッションは変わらない
東京神田にあるサステナブルレストラン「ROSY(ロージー)」は5月末をもって店舗の営業を終える。6月以降はケータリングに特化したサービスに切り替える。ロージーはサステナブルを重視したレストランで、エシカルやオーガニックに関心の高いコミュニティーに愛されてきた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

ロージーは東京の千代田区神田のオフィス街に位置するレストランだ。2018年9月に営業を始め、今年で8年目を迎えた。「未来をともに育てる」をミッションに掲げ、環境や健康に配慮した食材を使った料理を提供してきた。
店舗は築70年の3階建ての古民家をリノベーションした。雰囲気があり、店内の壁一面には、エシカルやオーガニックに精通する有識者のサインがびっしりと書かれている。
■創業の原体験は「祖父への想い」
ロージーを立ち上げたのは、フードプロデューサーの森敏さん(52)。ロージーに加えて、千葉県柏市の柏の葉キャンパス駅近くに位置する、カフェレストラン「Sweedeedee(スウィーディーディー)」も運営する。
森さんはオーガニック食品メーカーなどを経て、2008年、34歳で独立し、自身の会社Organic Crew(オーガニッククルー、東京・千代田)を創業した。

オーガニックやエシカルをテーマにしたマルシェやカフェなどの企画を手掛け、2015年には米国オレゴン州ポートランドにあるレストラン「 navarre(ナヴァ―)」の日本初展開をプロデュースした。
ナヴァ―はオーガニック野菜などをメインに取り扱うレストランで、地産地消の文化が根付くポートランドで人気を博す。
ロージーは、これまでに培った有機栽培・自然栽培を行う全国の農家とのパイプを生かして、2018年9月に立ち上げた。
オーガニック野菜は契約農家から仕入れ、卵はアニマルウェルフェアに配慮して平飼い卵を使う。調味料もフェアトレード認証を得たものを使い、パンもオーガニック小麦を使用した自家製にこだわる。自然派ワインを豊富に取りそろえる。
森さんがサステナブルな食にこだわる原体験は幼少期の経験にある。食道がんを患っていた祖父の喉を通るものを作りたいと思い、5歳で将来はレストラン経営者になることを夢見た。
■エプロンやラップも環境配慮型に
ロージーのサステナブルへのこだわりは食材だけではない。スタッフのエプロンはオーガニックコットンの生地から作った。染色は規格外の野菜を使った、フードテキスタイルだ。食材を保存するラップは、オーガニックコットンのみつろうラップを使う。
フライパンなどの調理器具は、有害物質PFASフリーのものを選んだ。テイクアウト用のカップは、FSC認証の紙カップを、ランチボックスも植物由来だ。
■「ケータリングに移行しても思いは変わらない」
エシカルやオーガニックに関心の高い層から支持を集めていたが、長期化したコロナ禍や材料費や光熱費の高騰によって、店舗運営が厳しくなった。
今年に入り、ロージーの閉鎖を決め、今後は需要が伸びていたケータリング事業に特化する。SDGsやサステナビリティに関連したイベントやセミナーは増えており、その際のケータリングとして活用してもらうケースが増えていた。
メニューそのものや方向性は大きく変えない。ロージーで契約していた農家との取引も継続する意向だ。ケータリングの際に、森さん自身が食のサステナビリティに関して講演するプランも検討中だという。
森さんは、「ロージーが掲げたミッション『未来をともに育てる』は、日本の食を守るという意味でもある。楽しく、美味しく食べることを通して、環境や人権問題を伝えてきた。ケータリングに移行するが、その思いは変わらない。これからは出向くことで直接伝えていきたい」と話す。
「文化や思想、言葉、肌の色が違っていても、食べるときはみんな笑顔になる。食で世界をつなげていきたい」と、創業当時に掲げた想いを語った。