電子ごみのリサイクルでアフリカを灯す ナイジェリア企業

アフリカ・ナイジェリアで、電子廃棄物の削減と、電力確保の両方に寄与するスタートアップがある。電子廃棄物から部品を回収し、安価なソーラーランタンを生み出すクアドループ社だ。クリーンなエネルギーによる照明器具を、低廉な価格で中小企業の経営者や地域の病院に提供する。同国で頻発する停電時の代替手段となるだけでなく、夜間のエネルギー消費量の削減にも役立っている。(北村佳代子)

アドループ社の創業者・ドジー・イグウェイロ氏

アフリカ随一の国内総生産(GDP)で、人口2億人を抱えるナイジェリアは、経済・人口規模ともにアフリカ最大の経済国だ。平均年齢(人口中央値)が18歳と若く、2050年には同国の人口が4億人に達するとの推計もある。

めざましい経済成長に伴って電力需要も拡大を続けるが、同国の電力事情は他のアフリカ諸国同様に不安定だ。2022年だけでも、全土の送電量がほぼゼロとなる「送電網の崩壊」が7回発生した。

電気電子機器廃棄物(WEEE)の増加も深刻だ。アフリカには先進国から膨大な量の中古品も流れ込む。ノートPCや携帯電話などの電子廃棄物には、人工では作り出せない貴重な金属以外にも有害物質が含まれる。リサイクルインフラの整備が遅れるアフリカでは、野焼きなどの不適切な処理が横行し、健康被害の拡大が大きな社会問題となっている。

こうした課題を前に、電子廃棄物から使える部材を回収し、太陽光で充電できる照明器具の製造に乗り出したのが、ナイジェリアのラゴスを拠点とするクアドループ社だ。ドジー・イグウェイロ氏ら3名の創業メンバーを含む10名で、ソーラーランタンのほか、家庭用太陽光発電システムの製造を手掛ける。

主力ソーラーランタン「IDunnu(イデューヌ)」は、リチウム電池やワイヤー、ねじ、スクリーンなどのリサイクル部材が全体の7割を占める。中古部品を使うため保証期間は1年と短いが、USB充電や電池交換にも対応する。アフリカのECサイト「Jumia」での価格(壁掛けタイプ)は20000ナイル(約6000円)だ。

「パン屋さんも大工さんも、どんな仕事にも事業の継続には電気が欠かせない。需要はあるのに、国内で部品を調達できず製品が作れなかった。その時、電子廃棄物のリサイクル活用を思いついた。生産コストを抑制しリーズナブルな価格で顧客に提供できるだけでなく、電子廃棄物の削減にもつながる」と、イグウェイロ氏は言う。

利用者は、突然の停電時における代替手段としてはもちろん、高額な発電機に代わって夜間のエネルギー消費を効率化できる。今年6月の発売以来、農村部や都市近郊の事業経営者向けに200台を販売した。今後は、電力の安定確保が欠かせない病院への導入も図りながら、「1000台の生産で5000キロの電子廃棄物削減を目指す」。

子どものころから電子機器が好きだったイグウェイロ氏は、大学卒業後に電気通信のエンジニアとして初めて、当時はまだ珍しい太陽光発電システムの設置に携わった。以来、電子ハードウェアの使用方法を研究してきたという。

「電子廃棄物を雇用創出手段としてとらえ、アフリカの若者たちに力を与えながらこの地のサーキュラーエコノミーに対する意識を向上させたい。サステナブルな消費習慣を根付かせ、アフリカ人によるアフリカ人のための電子機器の生産も強化したい。」

イグウェイロ氏はオルタナの取材に対し、「使用済みEVバッテリーも、われわれには必要な資源だ。ソーシャルインパクトを創出するために、日本企業や幅広い投資家とも連携したい」と語った。

ソーラーランタン「IDunnu」

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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