記事のポイント
- JANPIAはこのほど、企業とNPOのマッチング成果報告会を関西で開催した
- 休眠預金は年間1400億円ほど発生も、活用は360億円程度となる
- 一番の課題は担い手の確保、企業との連携には「インパクトの可視化」もカギに
日本民間公益活動連携機構(JANPIA)はこのほど、ハイブリッドで関西経済連合会との共催で「SDGsへの貢献につなげる関西マッチング会 成果報告会」を開催した。休眠預金は年間1400億円ほど発生しているが、その一方で活用できているのは360億円ほどにとどまっている。休眠預金のさらなる活用に向けて一番の課題は担い手となる実行団体の確保。実行団体の活性化には企業との連携へ「インパクトの可視化」も重要となる。(オルタナ編集部=萩原 哲郎)
「休眠預金活用事業」とは金融機関で2009年1月1日から10年以上取引がない預金などを社会課題の解決や民間公益活動に活用するもの。19年度に「休眠預金活用事業法」が施行され、内閣府から指定された指定活用団体が休眠預金などの分配・管理を行う。JANPIAは19年1月11日に指定活用団体に指定されている。
休眠預金は年間で1400億円ほど発生している。これに対して、JANPIAのこれまでの累計・出資予定額は361億円ほど。シニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均氏は「金額が少ないと感じるかもしれない。一番の課題は担い手の確保だ」と指摘する。
団体の活動を活性化するうえで不可欠なのが企業との連携だ。そのため、休眠預金等活用制度では企業や自治体などとの多様なセクターと連携するコレクティブ・インパクトが重視される。
担い手となる実行団体の活動の活性化に向けて期待されるのは、企業との連携だ。JANPIAの調査によれば、実行団体側も9割が企業との連携を希望する。そのニーズの中身も資金的支援だけでなく、人的支援、事業面での連携、また最近増えているものとして「社会的弱者等の就労支援」も挙げる。連携も一過性のものではなく、継続的に行われることを望む声が多い。
こうした企業とNPOをつなげる取り組みのひとつとして行っているのが「マッチング会」となる。
7月24日に行った「関西マッチング会 成果報告会」では、住友ゴム工業、PwC Japan、間口ロジスティクスの3社のマッチング事例についてそれぞれの企業の担当者から報告とパネルディスカッションが行われた。報告内容は以下の通り。
住友ゴム工業: 宝塚NPOセンターと連携。地域食堂やこども朝食食堂への助成や、児童書の寄贈に際しては神戸本社社員が持ち寄って1週間の回収期間で約100冊の児童書が集まって寄贈された事例などが報告された。
PwC Japan: NPO法人たねとしずくと連携。たねとしずくは一人親や困窮家庭の子どもの支援を行っており、今回の連携ではお祭り企画の支援で子どもたち自身が企画することをワークショップ形式で支援した。
間口ロジスティクス: あたつく福祉型事業協同組合と連携。外国人スタッフなど現場の人材が多様化するなかで視覚的に業務を理解できる動画マニュアルの作成を組合に委託。組合側は就労困難者のICTスキル向上や社会参加が実現できるとともに、企業側にとっては高品質な教育用動画マニュアルの確保や管理者負担を軽減するなどの成果を得た。
成果報告のあとにはNTTデータグループの金田晃一氏をモデレーターに3企業のパネルディスカッションを行った。今回の連携を通じて得られた気づきや、スムーズな連携のあり方について議論された。
実行団体の社会的インパクトの可視化は企業が連携する際に指標とすることが多い。可視化に向けては資金分配団体が多くの役割を果たす。住友ゴム工業総務部の越公美氏は「最終的に目指すインパクトを可視化することで、実行団体にとっても改めて事業の重要性を認識し方向性が明確になる。助成して終了ではないようにするために、資金分配団体の役割は重要だ」とした。
また連携のなかで子どもとの対等な対話も必要となったPwC Japanパートナーの三澤伴暁氏は「子どもたちから見たときに、初めてコミュニケーションをとるかもしれない社会の大人であるということは響いた」とした。配慮を必要としながらも、参加した社員からは「自分の思い込みを改めさせられる、貴重な機会となった」という声があった。
JANPIAでは11月に東京でマッチング会を予定している。