DEI先進国NZで、なぜ自国第一政党が支持を伸ばしたのか

記事のポイント


  1. NZで、連立政権の一角を担うNZファースト(NZF)党が存在感を高めている
  2. NZF党の党首は「首相として好ましい人物」のランキングで3位に付けた
  3. 多様性の先進国とされるNZで、なぜNZF党が支持を伸ばしているのか

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ニュージーランド(NZ)で今夏に実施された2つの世論調査で、連立政権の一角を担うNZファースト(NZF)党が存在感を示した。支持率は上昇傾向にあり、ウィンストン・ピーターズ党首も「首相として好ましい人物」のランキングで3位に付けた。多様性の先進国とされるNZで、なぜNZF党が支持を伸ばしているのか。(ニュープリマス=クローディアー真理)

NZF党のウィンストン・ピータース党首

30年前にNZファースト党が動き出した

NZF党の歩みは30年ほど前にさかのぼる。

NZでは、1980年代から1990年代初頭にかけて、「ロジャーノミクス」と呼ばれる新自由主義経済改革が大規模に行われた。指揮を執った労働党のダグラス財務大臣の名が由来だ。新自由主義経済改革は、次政権を執った国民党も同様に推し進めた。民営化、規制緩和、社会福祉削減が進んだ。

ロジャーノミクスが国民に与えた負の影響は大きかった。NZの経済は、不況に陥り、失業率は急上昇。輸入品との競争が激化し、特に製造業において多くの雇用が失われた。高所得者が優遇され、所得格差は拡大した。

「誰も取り残されるべきではなく、社会は皆が支え合うことで最もよく機能する」と社会民主主義を信じていた国民は、ロジャーノミクスに裏切りを感じ、失望した。

そこで、存在感を示したのがNZF党だ。当時国民党閣僚を務めていたピーターズ現NZF党首は、1993年に離党し、NZF党を興した。「国益の最優先」を基本原則に挙げ、グローバル化や移民、他国の影響から国を守る立場を取った。

NZF党は、右派の国民党と左派の労働党という二大政党が軽視してきた、高齢者や労働者、地方の農村部に住む人々の声を代弁する。バランスや経験、常識を重視し、両極端のイデオロギーの中道を目指すとした。

そんな国民が共感を覚えたのがNZF党だった。創設と同年の1993年に行われた総選挙ながら、同党は8.4%の支持率を上げ、2議席を獲得した。政策綱領として、「経済的公平性」「国家主権」「公的責任」を盛り込んだ結果だった。

(この続きは)
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mari

クローディアー 真理・ニュージーランド

1998年よりニュージーランド在住。東京での編集者としての経験を生かし、地元日本語月刊誌の編集職を経て、仲間と各種メディアを扱う会社を創設。日本語季刊誌を発行するかたわら、ニュージーランド航空や政府観光局の媒体などに寄稿する。2003年よりフリーランス。得意分野は環境、先住民、移民、動物保護、ビジネス、文化、教育など。近年は他の英語圏の国々の情報も取材・発信する。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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