富士通など「リファラル採用」相次ぐ: 社員がリクルーターに

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記事のポイント


  1. 自社の社員に知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」が相次ぐ
  2. 民間企業の調査ではリファラル採用を導入済みの企業は6割に及ぶ
  3. 富士通はリファラル採用で400人以上を採用、内定承諾率は9割超に

自社の社員に知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」が大手企業を中心に広がっている。民間企業が2025年1月に発表した調査ではリファラル採用を導入済みの企業は6割に及ぶ。富士通はリファラル採用で400人以上を採用しており、内定承諾率は9割を超える。リファラル採用が増えてきた背景と導入のポイントを採用支援を行うTalentX(タレントエックス、東京・新宿)の鈴木貴史社長CEOに聞いた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

日本の労働市場は依然として「売り手市場」が継続しており、厚生労働省によれば2025年7月時点で有効求人倍率は1.22倍と高水準を維持している。正社員数も増加傾向にあり、採用競争の激化は企業にとって長期化する課題となっている。

こうした状況下、企業が採用コストの抑制と定着率の向上という相反するニーズに応えるための有力な手段として、リファラル採用の注目度が高まっている。

社員のつながりを通じて「見つけやすく定着しやすい」人材を確保できるからに他ならない。

62.5%の企業がリファラル採用導入済み

当社TalentXが2025年に公表した調査によると、リファラル採用制度を導入済みの企業は約62.5%に上り、ただの認知にとどまらず、主要な採用チャネルの一つとして確立しつつある。

本質的には人事部門だけの施策ではなく、経営層が人的資本経営の一環で戦略的にコミットすることで制度を生きたものとし、採用力の土台を支えるために不可欠な構造だ。

既に大手企業でも成果が見えてきている。富士通は2018年からリファラル採用を本格導入し、累計400人以上を紹介経由で採用した。内定承諾率は90%超という成果を挙げている 。さらに、全社的に運用を体制化して推進していることが、継続的な成果を支えている。

現在は20%超の企業が、中途採用人数の1割以上をリファラル採用経由で獲得しており、新規応募者(母集団形成)のためにリファラル採用に取り組む企業が多い中、製造業や、IT、コンサル、金融など、専門職種や一般的に採用難易度が高いと言われている職種を採用する企業の応募者の質の担保を目的としている傾向もある。

社員とともに仲間を迎え入れる組織に

ただし、属人的な紹介に頼るだけでは制度が形骸化するリスクもある。安定的に成果を出すためには、紹介プロセスを可視化し、候補者との関係を継続的に育てられる仕組みが必要だ。

社内ルールの整備に加え、外部のシステムや仕掛けを取り入れることで、リファラルは短期的な施策にとどまらず、主要な採用チャネルとして根づいていく。

サステナビリティ経営の文脈では、リファラル採用は「信頼という資本を活かす仕組み」となる。

自立的な採用体制は、企業文化と人的資本を豊かにし、長期的な成長を支える源泉となる。富士通のような取り組みこそ、経営層が人的資本経営にコミットし、「社員とともに仲間を迎え入れる組織」への脱皮の先駆けとして重要なメッセージを発している。(談)

株式会社TalentX 代表取締役社長CEO 鈴木貴史
1988年生まれ。2012年、㈱インテリジェンス(現・パーソルキャリア㈱)入社、イノベーション部門でゼネラルマネージャーを担当。15年、日本の採用のあり方に課題を感じ、MyReferを創業。その後MBOを経て18年、TalentXを設立。採用活動をマーケティング活動に転換する採用DXプラットフォーム「Myシリーズ」を展開。「第10回HRテクノロジー大賞」採用部門賞などを受賞。2025年東証グロース市場に上場。著書に『戦わない採用』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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