記事のポイント
- カリフォルニア州は24年4月、ファストフードの最低時給を20ドルに引き上げた
- 当初は、雇用者の負担が大きく、逆に人員削減を招きかねないとの声もあった
- しかし、半年間で雇用は拡大し、価格微増、米国版「三方良し」になった
米カリフォルニア州は2024年4月、ファストフードでの最低時給を20ドル(約3000円)に引き上げた。当初は、企業負担が大きく、人員削減を招きかねないとの懸念もあった。しかし実際には、ファストフード部門で雇用は拡大し、価格もわずかな上昇にとどまり、「米国版三方良し」になったとの研究が明らかになった。(オルタナ副編集長=北村佳代子)
カリフォルニア州のニューサム知事は10月4日、同州のファストフードの最低時給20ドルはウィンウィンウィン(三方良し)であることが証明されたとホームページで声明を出した。
そして、カリフォルニア大学バークレー校の労働雇用研究所が9月30日に公表した「最低時給20ドル」のインパクト分析の結果を紹介した。
カリフォルニア州では2024年4月から、ファストフードで働く人の最低時給を20ドル(約3000円)に引き上げた。同州で一般に適用されている最低時給は16ドル(2400円)だ。「時給20ドル」は米国内でもトップクラスの水準に当たる。
1年前にこの州法が成立した当初は、特に外食業界を中心に、懸念の声が多く聞かれた。大幅な賃金上昇は、経営者側の負担を重くし、結果として人員削減を余儀なくされ、雇用の壊滅的な減少をもたらしかねない、というものだ。
しかし、州法施行から6カ月が経ち、同研究所はこの施策の効果を、「大幅な賃上げが雇用喪失につながるという時代遅れの仮定を覆す」結果だと評した。
ニューサム州知事はこの分析結果を受けて、「ファストフード労働者の公正な賃金に対する我々のコミットメントが、労働者の家計を引き上げるだけでなく、我々の経済を強化するものであることを再確認した」と声明を出した。
■研究者が指摘した三方良し
研究結果によると、大手ファストフードチェーンで働く非管理職の労働者の90%において、平均賃金が18%上昇した。これまで低賃金で推移してきたファストフードの労働者にとって、今回の施策が有意に働いたことの証左となる。
懸念された雇用については安定的に推移した。同研究所は米国労働統計局(BLS)のデータから、同州のファストフードで働く労働者の総数は、2023年7月時点の75万人からほとんど変化がないことを確認した。
雇用の減少が見られなかっただけでなく、2024年7月には同州のファストフードで働く労働者数が史上最多を記録した。4月の施行以来、7400人の雇用増となった。
コスト増は、値上げによって消費者に跳ね返りかねない。しかし、メニュー価格の上昇は3.7%にとどまった。典型的な4ドル(約600円)のハンバーガーでは15セント(約22円)程度だ。
最低時給の引き上げが、雇用の減少や大幅な価格上昇を伴うことなく、労働者の所得を大幅に引き上げる形になった。
■コスト増はどこで吸収されたのか