記事のポイント
- 人的資本経営のカギは経営戦略の実現を中核で支える中核人材の育成だ
- 一方、ミレニアル世代は管理職になりたがらない世代でもある
- 専門家は、管理職ではなく「経営職」を育てることが重要だと主張した
人的資本経営のカギは、経営戦略の実現を中核で支える「中核人材」の育成だ。ある程度経験を積んだミレニアル世代が今後の経営の主役になるが、管理職になりたがらない世代でもある。人的資本に詳しい松田千恵子・東京都立大学大学院経営学研究科教授は、管理職ではなく「経営職」を育てることが重要だと主張した。(聞き手=オルタナ副編集長・池田 真隆)

東京外国語大学外国語学部卒業。仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院経営学修士。筑波大学大学院企業科学専攻博士課程修了。博士(経営学)。日本長期信用銀行、ムーディーズジャパン格付けアナリスト、国内外戦略コンサルティングファームパートナーなどを経て現職。三越伊勢丹ホールディングス株式会社社外取締役、旭化成株式会社社外取締役など。
中核人材を育成するためには、経営戦略と人事戦略の連動が欠かせないが、ズレることが多い。いくら人事部がこれまでの延長線上のやり方で経営戦略との連動を図ろうとしてもうまくいかないだろう。なぜなら人事部は、やったことがない仕事に直面しているからだ。
高度経済成長期、グループ企業においては、そもそも人事部は「戦略」を持たなくても、毎年ある程度の人数を採用することができた。
人事部の役割は、新卒一括採用、終身雇用の日本型経営に最適な「制度」を作ることだった。年功序列の評価制度、異動の権限、福利厚生などを考えるのが仕事だった。
人事部の仕事の中に、経営や事業に必要な人材をバランスよく配置するアロケーションを考えることはなく、不足時に中途で採用するという発想は乏しかった。
だが、人口が減ってきた中で、「戦略なき人事」が通用する時代ではなくなった。企業は自社のゴールを明確にして、そのゴールの達成に向けた経営戦略を考え、ステークホルダーに伝える。人事部としては、その経営戦略を実行するために、どのような人的資源が必要かを考えなくてはならない。これが人事戦略だ。
先が読めないVUCA時代には、社会の変化に機敏に対応できる経営戦略でなくてはならず、同時に組織体制もアップデートしなくてはいけない。人手不足の状況でこのようなことを考えるのが人事部に求められていることだ。
■「おかざり役員」ならいる意味なし
■ホワイトな職場では「経営」は学べない
■「経営職」が増えると離職も防げる