記事のポイント
- MUFGは「人的資本経営評価型ローン」を商品化
- ジャックス、山科精器などと成約
- 昨年12月には丸井グループと300億円のローンを成約
三菱UFJ銀行は、「人的資本経営評価型ローン」を昨年3月に開始した。企業の人的資本経営の取り組みを評価し、支援する融資商品である。昨年12月には丸井グループと300億円の「人的資本経営評価型ローン」を成約した。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)
三菱UFJ銀行は、お客さまの人的資本経営の取り組みを評価する融資商品である「人的資本経営評価型ローン」を昨年3月に開始した。
本ローンは、企業の人的資本経営の取り組みを評価する融資商品であり、MURC(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)が、JCR(日本格付研究所)との連携で人的資本経営客観的な評価(MUFG人的資本経営評価)を実施し、評価点や課題をフィードバックする。
MUFGの人的資本経営評価は、「Sランク: 最高評価」「Aランク: 特に進んでいる人的資本経営」「Bランク: 十分な人的資本経営」等がある。
本ローンは、これまで、ジャックス(クレジットカード会社、3月成約、MUFG人的資本経営評価A)、グローバル・リンク・マネジメント(不動産仲介会社、5月成約、同B)、山科精器(医療機器製造メーカー、9月、同B)、丸井グループ(金融サービス会社、12月、同S)との間で成約している。
昨年12月には、丸井グループと運転資金を使途とする300億円の「人的資本経営評価型ローン」が成約した。
各社の高く評価を受けた人的資本経営に関する取り組みは、次の通りである。
1.管理職に占める女性の割合、男女の賃金格差、男性の育児休業取得率の実績の開示。(ジャックス)
2.当該目標の達成のための具体的な施策として、新たな人事施策の導入、女性社員のための教育プランの策定、育児休業取得の促進に関する啓発、デジタル人材育成プログラム。(ジャックス)
3.人的資本に関する各指標について、最低年1回、有価証券報告書やホームページ等の公表。(グローバル・リンク・マネジメント)
4.企業理念の浸透を重要視しており、従業員満足度調査の結果も踏まえて理念浸透のための施策を様々実施している。(グローバル・リンク・マネジメント)
5.全社員を対象とした定期面談を四半期ごとに実施。定期面談の実施有無は社内データベースにて共有。社内の人間は全社員の実施状況を常に確認することができ、透明性が高い。(山科精器)
6.全従業員対象の社食でのヘルシーメニューの提供や、スポーツフェスタ、喫煙率を下げる取組み、精神科の産業医を設置し社員の相談窓口を毎月開設している。(山科精器)
7.経営者が、人的資本に関する方針を明確に公表し、経営理念の実現に必要な人材像を定義し、人的資本投資の収益やコストを試算し、価値創出を確認。(丸井グループ)
8.スキル向上プログラムとして、DX研修や「メタバース工学部」などの研修を実施。(丸井グループ)
9.エンゲージメント調査を定期的に実施し、ESGデータブックにて結果を公表しており、調査結果に基づき、従業員エンゲージメントを向上させる施策を講じている。(丸井グループ)
10.人権リスクとその対象者を整理し、重要課題を特定。(丸井グループ)
一方、グローバル・リンク・マネジメントが公表している「更なる取り組みを進めることが期待される項目」は、次の通りである。
1.指導原則に沿った人権方針の策定及び公表
2.グループ経営方針を策定し、その方針に基づく人材ポートフォリオのギャップ分析及びグループ全体の採用・育成等の人材戦略の実行
3.ROE等の財務指標と人材に関する指標との繋がりを示すこと等により、経営戦略と人的資本投資の結びつきを可視化
4.サクセッションプランの策定及び公表
5.エンゲージメント調査結果の公表 等
MUFGは、「「MUFG Way」の中で持続可能な環境・社会の実現に向けて、全てのステークホルダーの課題解決のための取り組みを進めている。引き続き、お客さまの人的資本経営の取り組みを支援し持続的な成長を後押しすることで、環境・社会課題の解決に貢献する」と強調している。