記事のポイント
- 金融機関が対象の脱炭素枠組み「NZBA」が活動を停止した
- 同枠組みは50年にネットゼロを約束した金融機関が参加していた
- 米・共和党議員からの圧力を受け、24年末から脱退が相次いでいた
金融機関が対象の国連・脱炭素枠組み「NZBA(ネットゼロ・バンキング・アライアンス)」は10月3日、活動を停止した。同枠組みには、2050年に投融資ポートフォリオにおけるネットゼロを約束した金融機関が加盟していた。24年には加盟機関は140行を超えるなど急速に拡大していたが、共和党議員の圧力を受け、24年末の金融世界最大手ゴールドマン・サックスの脱退を皮切りに、シティグループやバンク・オブ・アメリカなど脱退が相次いでいた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)
NZBAは「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」という名称の国際イニシアティブだ。パリ協定で定めた「1.5℃目標」の達成を目指すため、国連が立ち上げた。
金融機関がNZBAに加盟するには、2050年までに投融資ポートフォリオにおける温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにすることを宣言する必要がある。加えて、「1.5℃目標」の達成に向けて、科学的根拠に基づいたGHG排出削減シナリオの公開や進捗の報告が条件だ。共通の枠組みで取り組み状況を開示することで、各金融機関の「比較可能性」が高まり、脱炭素に向けた取り組みを促すことが狙いだ。
■米では「反トラスト法違反」との見方が高まる
NZBAの会員は、2021年の発足時に43行だったものの、2024年には140行を超え、会員機関の総資産を合わせると74兆米ドルにまで拡大した。
だが、米国では共和党議員を中心にNZBAに基づく活動が「反トラスト法違反」との見方が高まった。こうした訴訟リスクを懸念し、同国ではNZBAから脱退する金融機関が相次いだ。
2024年末に金融世界最大手ゴールドマン・サックスが脱退すると、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴと続いた。2025年1月にはモルガン・スタンレーも脱退を表明した。
日本の金融機関は6行が参加していたが、三井住友信託銀行以外の三井住友フィナンシャルグループ、野村ホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループ、農林中央金庫、みずほフィナンシャルグループが脱退した。
■NZIAやNZAMなど、活動を縮小するイニシアティブ続々
NZBAは活動停止の発表と同時に、銀行向けの「気候目標設定ガイダンス」の最新版を公表した。パリ協定の「1.5℃目標」に沿ったネットゼロの目標設定の主要原則を概説したものだ。
米国では「反ESG」「反DEI」の圧力を受け、NZBAのように活動を縮小するイニシアティブが増えている。ネットゼロ保険連盟(NZIA)は2024年に解散し、ネットゼロ資産運用会社イニシアチブ(NZAM)は2025年1月に主要活動を一時停止すると発表した。国連が支援するグラスゴー・ネットゼロ金融連盟(GFANZ)も、2025年に大幅な再編を行った。