自社の記念事業でCSRを次のステージへ[町井 則雄]

帝国データバンクによる「周年記念企業」調査によれば、2015年に10周年や100周年の節目の年を迎える企業は、全国に15万273社もあるそうです。このような10年、100年に一度の節目には、ほとんどの企業で何がしかの企画やイベントを行うのが通例です。(町井 則雄=日本財団)

それらは大規模なものから控え目なものまで千差万別ですが、これらの企画の趣旨は主に顧客と従業員への感謝の意味を込めた企画として実施されます。そのため、このタイミングは自社のCSRの取り組みを進化、あるいは加速させる上で貴重なタイミングの一つと言えます。

特に取り組みが遅れているという場合にはなおさらこれを奇貨とすることを考えるべきではないかと思います。その理由を挙げるとすれば、下記のような10の理由によります。

1. 記念事業という見えやすい目標に向かって全社的な盛り上がりと一体感を生みやすい
2. トップの関心が高くコンセンサスを得やすい
3. なにか新しいことを始めたいというポジティブなオーダーが経営層から勝手に降ってくる
4. 社内事業の中でのプライオリティが高い
5. 特別予算枠が設定される
6. 社会貢献・お客様への感謝・従業員への感謝などの言葉での社内共感を生みやすい
7. これからの自社の在り方を考えるという「未来へのビジョンづくり」への共感を生みやすい
8. 自社のブランディングやイメージアップにつなげられるような取組が歓迎される
9. ボトムアップの企画を通しやすい雰囲気が生まれる
10. 部署横断型で物事が進む

全てが当てはまらない場合やこれらの状態を意図的に作り出なければならない場合もあるでしょう。しかし、企業理念やビジョンを社内で再確認するだけでなく、各ステークホルダーにもそれらを知ってもらう重要な機会であり、自社のPRやブランディングにつなげる好機でもあることを考えれば、これらはすべてCSRの取り組みとシンクロしている、またはシンクロできるものですので、活用しないのはもったいないと言えます。

そして、次の段階として「具体的に記念事業で何をするか?」を考える際、CSR部門が重要な役割を担えることも大切な要素です。なぜなら、これらの事業は、社会との共感共創という発想で企画を立てることが重要だからです。
それは必ずしも社会貢献事業である必要はありません。

しかし、社会の中で自分たちの会社がこれから果たしていくべき役割を考え、それを形にしようとする記念事業には必ず社会への貢献は含まれているもので、それを企画し提案できるセクションとしてCSR部門が果たすべき役割は大きいと言えます。

皆さんの会社で記念事業が予定されているのであれば、CSRの取り組みをもう一段上に上げるための積極的な関わりをお勧めします。それは結果として、社内におけるCSR部門の役割を経営層や社員に知ってもらう大切な機会ともなるでしょう。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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