■先住民がプランテーションの強制労働下に
砂糖の原料として、てん菜(砂糖大根)とサトウキビの2つの農作物がある。この砂糖原料調達における課題として、欧州でも栽培されるてん菜は、気候変動、水の有効・効率的使用、生物多様性管理などの問題を抱える。また主に熱帯地方で栽培されるサトウキビは、児童・強制労働や土地収奪などの人権侵害、また農薬使用、焼畑、気候変動による水ストレスなどの環境上の問題がある。
英ガーディアン紙によると、カンボジアは、特恵関税制度の適用によりEUへの砂糖の輸出が非課税になっておりEUへの砂糖の大量輸出国であるが、2006年からは企業の介入により、サトウキビのプランテーションがさらに活発になった。
しかし、開発に当たってコンサルテーションや環境影響評価などの手順を一切踏むことなく、先住民族の土地がプランテーションのために収奪され利用されているという。先住民族は、生活のために止む無く強制的にプランテーションで働かざるを得ず、それら強制労働とともに児童労働も行われているという。
この一件では、EUの砂糖製造最大手であるテート&ライル社が、同社のサプライヤーであるタイのKSLグループとともに行っているとして、2013年カンボジアの先住民に英国で訴訟を起こされている(現在も訴訟継続中)。
また近年砂糖原料を使用する業界は食料品業界に留まらず、原料のサトウキビを使用して、生分解性プラスチック、バイオ燃料の製造といった化学工業やエネルギー産業にも関わるものとなっている。日本においては砂糖についての自給率は低く、海外からの輸入にほとんど頼っている状況がある。
今後このように産業をまたいで、関連企業がサプライチェーンの中で、どのように持続可能な形で毎日の食に関わる砂糖の原料を調達するのか、またプラスチックやバイオ燃料の原料として調達するのか、今後非常に重要となってくるということなのである。