ケーススタディから考える少子高齢化と気候変動問題

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今回はJFBS第5回年次大会「企業家精神とサステナブル・イノベーション」におけるセッション内容のご紹介は一回お休みとし、2015年11月12日(木)にドイツ日本研究所(DIJ)にて行われた研究会の内容についてご紹介します。本研究会では「日本におけるリスクとチャンス:地域コミュニティが直面する少子高齢化問題と気候変動問題」をテーマとして、地域でこれらの問題に取り組んでいる事例の報告とディスカッションが行われました。

■少子高齢化問題への取り組み
少子高齢化問題への取り組みとして、次の5つの事例報告が行われました。①NPO法人フローレンスによる病児保育市場の創造、②キャリア・マムによる主婦の社会進出促進、③フラウによるビジネスを利用した子育て環境の革新と母親の意識変化の促進、④NPO法人ケア・センターやわらぎによる24時間365日の在宅介護サービスを通じた高齢者・障害者支援、⑤サラダコスモによる耕作放棄地活用による農地活性化・食料自給率の向上、高齢者雇用、観光事業による地域の活性化。

これらの事例についてはケーススタディとして書籍『ソーシャル・ビジネス・ケース―少子高齢化時代のソーシャル・イノベーション』(谷本寛治編、土肥将敦・大平修司・大室悦賀・大倉邦夫・古村公久著、2015、中央経済社) にまとめられています。ソーシャル・イノベーションとは「社会的課題の解決に取り組むビジネスを通して、新しい社会的価値を創出し、経済的・社会的成果をもたらす革新」(同書, p.3)と定義されており、事例報告ではそれぞれの取り組みにおけるソーシャル・イノベーションの創出プロセスと普及プロセスに関する分析結果が報告されました。

「誰がどこでどのようにソーシャル・イノベーションを生み出しているのか、さらにそれがどのように支持され広がり、どのように社会が変革されていくのか」という問題意識のもと事例をみていくと、ソーシャル・アントレプレナーとさまざまなステイクホルダー(行政・企業・NPO・金融機関・コミュニティ・大学など)が出会い相互作用・相互学習を経て新しいサービスや仕組みを生み出し広げていったことが明らかになったということです。

報告後には「ソーシャル・ビジネスを実施する事業者にはNPOも営利組織もあるがなぜそのような組織選択を行ったのか」「NPOについては、ビジネスとして継続性を確保できるような利益が得られているのか」などの質問により、活発な質疑応答が行われました。

■気候変動問題への取り組み

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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