ニシン絶滅に懲りない日本の漁業

だが、問題はホッケだけではない。水産庁の資源評価を見ていると日本沿岸で同様に乱獲によって厳しい状況に置かれている魚が少なくないことに気付く。

ホッケ同様に資源が低レベルにあり、しかも減少傾向にある魚には、イカナゴ、対馬暖流系群のマサバ、伊勢・三河湾のマアナゴやトラフグ、シャコ、日本海北部系群のスケトウダラなどがある。マガレイやムシガレイ、ハタハタの一部なども同様だ。いずれも日本人が古くから食べてきたなじみ深い魚ばかりだ。

何度も指摘したように日本の漁業と漁食をめぐる状況は厳しく、漁獲量の削減と資源管理の強化が急務なのだが、漁業者の中からはいまだに「資源管理も大事だが、漁業経営のことも考えてほしい」との抵抗が聞かれる。資源管理を行わずに魚がいなくなったら、漁業経営も何もないはずなのだが。

※この記事は、オルタナ40号(2015年3月30日発売)の「人と魚の明日のために」で連載したものを転載しました。
オルタナ40号の詳細は⇒ http://www.alterna.co.jp/14728
amazonは⇒ http://www.amazon.co.jp/dp/B00T3C65BE

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井田 徹治(共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

記者(共同通信社)。1959年、東京生まれ。東京 大学文学部卒。現在、共同通信社編集委員兼論説委員。環境と開発、エネルギーな どの問題を長く取材。著書に『ウナギ 地球 環境を語る魚』(岩波新書)など。2020年8月からオルタナ論説委員。

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