英国EU離脱を「有限地球史観」から考える

石井吉徳 東大名誉教授/もったいない学会名誉会長/元国立環境研究所長(第9代)

EU離脱の国民投票の結果は、まさに僅差であった、市民の意思は揺れ動き、国民にはさまざまな迷いがあったのであろう。色々な解説、コメントが世界や日本に流れた。それは今も続く。だがそのほとんどは経済的側面からである。

メディアや識者の関心は為替の変動、株価下落などに集まっている。だが、私は自然科学者として、かなり違った角度から見ている。それは「食料、エネルギー、軍事」の文明的視点である。

なぜ、多くの人が、このように迷うのだろうか。自信がないのだろうか。当の英国の離別派のリーダですら、選挙後の発言がぶれ、批判されている。市民も「あれで良かったのか」と後悔する、そして再投票をとの声を上げ、その数は300万人を超えるという。

このような世論、迷いに対して、ご参考までに、私の文明的視点を述べてみよう。それは地球物理学者としての、一史観と言って良いが、基本的にそれは「有限地球論から、無限の経済成長はあり得ない」というものである。

世界に蔓延する、「マネーばらまき」的な経済政策は一部裕福層のみを利する仕組みであり、上位1%が富の殆どを占有し、格差下位99%は損をする。

「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」という、いわゆるトリクルダウンは機能しなかった。これは古来、金持ちはより儲けようとする、ベニスの商人の逸話にもある、強欲資本主義の「性」というべきだろうか。

ノーベル経済学賞学者であるジョセフ・E・スティグリッツは、近著「The Price of Inequality–How Today’s Divided Society Endangers our Future] 2012で詳細に論じている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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