「味の素 バードサンクチュアリ」の思い出

率直に言って、そのほうが管理しやすいし、区域内への立入りや開放の要望をお断りする際に説明しやすい、との発想もあった。

立入禁止にした対岸の遊歩道に代えて新たな歩道を従業員の手で設置。 味の素(株)提供
歩道を従業員の手で設置。 味の素(株)提供

バードサンクチュアリ開設当初の「設備投資」は、池のほとりにあった物置の観察小屋への簡単な改装費用、池の工場側岸辺への生垣設置費用(池の水鳥から工場の建物や人間の姿が見えなくなるように設置)など150万円程度だった。

立ち入り禁止にしたサンクチュアリ内の遊歩道に代えて、生垣に沿って新たに設置した歩道の整備や緑化など、趣旨に共感してくれた従業員のボランティア活動によるところが大きかった。

その後、来観者が増えるなか、観察小屋の窓を増やし観察できるスペースを広げる、小屋の出入口のブロックを積み上げた階段から、車椅子なども入れるスロープにするなど2年間で500万円ほど使った。これらは、工場で例えると「増産対応の増設」のようなものだから会社や工場の理解も得られやすかった。

それにしても、2002年当時に工場の中に1万㎡以上の立入り禁止区域を設け「バードサンクチュアリ」を設置するなどという突拍子もない提案を事業所長以下、工場の皆さんが受け入れてくれた。そして、それを会社としても推進してくれた。なんと懐の深い企業だろうと今にしても思う。

当時の事業所長が挙げた条件は、

● 「バードサンクチュアリ」という呼び名に相応しいものであること

● 「私」が転勤した後も維持管理できるようにすること

という2つだった。

sakamoto_masaru

坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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