コミュニケーションロボットで遠隔地から演奏会鑑賞

■思春期の孤独感が開発のきっかけ

OriHimeを囲んで参加者に説明する吉藤氏
OriHimeを囲んで参加者に説明する吉藤氏

このロボットを開発したのは、オリィ研究所代表の吉藤健太朗氏(28)。吉藤氏がこのロボットを開発したきっかけは小学5年から中学2年までに経験した不登校だという。その時に感じた激しい孤独感が、分身ロボットにつながっている。ロボットによる人間のような仕草にこだわるのは、そこに確かに「居る」という存在感を大事にしているからだ。

「人工知能が人を癒す未来よりも、親しい人と人同士がつながり、孤独でなくなる未来を創りたい」という信念で、今まで入院中の患者と学校や家族などをロボットでつないできた。難病であるALS患者が唯一動かせる視線を使ってOriHimeを操作して会話したり、会社と在宅勤務者を繋いだりしてきた。結婚式にロボットを通じて海外から出席することもできたという。コミュニケーションロボットOriHimeの活躍の場面はどんどん広がりつつある。

■療養中の人にも演奏会の臨場感を

吉藤氏は青年版国民栄誉賞とも呼ばれる「人間力大賞」など数々の受賞歴があり、メディアへの登場も多く、注目が集まっている。それは彼の生き様への共感が広がっていることに他ならない。

能面を参考にしたデザインは、テレビ電話とは全く異なる存在感がある
能面を参考にしたデザインは、テレビ電話とは全く異なる存在感がある

今回のピアノ演奏会に出演した、オリィ研究所顧問の谷本忠駿氏(52)もそんな共感者のひとりだ。IT企業を経営する谷本氏は、同氏を応援する理由として「何のためかという明確な目的が彼の生き様に映し出されている」ことを挙げた。今回の試みも谷本氏が「OriHimeを通して、療養中の人にも演奏会の臨場感を感じてもらいたい」と周囲に協力を求めたところ、出演者は快く賛同し、コンサートホールも全面的に協力してくれたという。

たとえ体が自由に動かなくても、「行きたい場所へ行き、会いたい人に会える」、そんな世界をOriHimeはこれからも作っていくだろう。

 

「CSR48」は、企業のCSR担当者を中心に「CSRに関心のある女子たち」が集まったグループ。「CSRをもっと身近に」をミッションに、勉強会やイベントを実施する。⽬指すのはサステナブルな社会と、女性のエンパワーメントによって、利害や⽴場を超えて、より良い社会に向けたアクションをおこすこと。メンバーの所属は、商社、メーカー、ゼネコン、NPO法人などさまざま。 雑誌オルタナの連載の他、イベント登壇や4月はじまりのSDGsカレンダー発売など多彩に活動を広げる。オフィシャルブログ 執筆記事一覧

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