■SDGsと栄養問題
2015年9月に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までに飢餓と栄養不良に終止符を打ち、すべての人が栄養のある食料を十分に得られるようにすることを目標にしている。
ASVの取り組みの一つ「ガーナ栄養改善プロジェクト」は、生後6─24カ月の離乳期の子どもの栄養改善に取り組んでいる。味の素(株)は、伝統的離乳食kokoに添加する栄養サプリメント「KOKO Plus」を開発。大豆、リジン(アミノ酸)、ビタミン、ミネラルなどを含むサプリメントで、1袋で子どもの1日分に必要な栄養素を摂取できる。
栄養効果試験では、KOKO Plusの摂取と栄養教育を実施した場合、微量栄養素(ビタミン、ミネラルなど)の摂取と栄養教育を実施した場合に比べて、身長、体重ともに有意に改善した。これにより、微量栄養素を単体で摂取するよりも、アミノ酸と微量栄養素を組み合わせることで、より栄養改善の効果があることが分かった。
「国際社会が一丸になってSDGsに取り組まなければいけないが、日本政府だけでは限りがある。味の素(株)という民間企業が先陣をきって多種多様な取り組みを進めている。第二第三の味の素(株)が生まれてほしい」
こう話すのは、国際協力機構(JICA)民間連携事業部連携推進課の馬場隆課長だ。「栄養士の制度を構築するところまで踏み込んだ懐の深い取り組みだ」と評価する。
■NGOと新たな協働へ

ガーナ栄養改善プロジェクトは、JICA、ガーナ保健省、ガーナ大学、ケア・インターナショナル ジャパンやワールド・ビジョン・ジャパンといった国際NGOなどと連携し、ソーシャルビジネスの確立を目指している。
「経済成長に伴い、収入は上がっているが栄養課題は極めて高い」と話すのは、味の素(株)研究開発企画部の取出恭彦シニアマネージャーだ。
「当初から、ビジネスの力で社会課題を解決する『ソーシャルビジネス』を目指している。貧困層だからといって、安ければ売れるわけではない。購入可能な価格で提供するとともに、母親が子どものためになっているという誇りや確信が必要だ」と力を込める。
2011年からガーナに駐在している味の素(株)研究開発企画部の北村聡シニアマネージャーは、「子どもの体調不良に悩んでいる母親たちに喜んでもらっている。ビジネスとして軌道に乗せるには時間がかかるが、手応えを感じている」と言う。
今後は、国際NGOなどと協働し、KOKO Plusだけではなく、ほかの商品もバスケットに入れてセット販売するなど、販売需要の創出を目指す。