リクルートグループは、不満や不便、不安などの「不」を無くすための事業を展開している。なかでも、若者の自立支援に力を入れ、就職支援プログラム「ホンキの就職」や家賃保証サービスの子会社を立ち上げた。自立した生活を送るために必要な就労と住まいの面から若者を支えている。こうした事業を通じて、自社のＣＳＲを果たす考えだ。
文部科学省の平成28年度学校基本調査によれば、大学卒業時に進路が決まっていない人は年間約5万人。売り手市場と言われる昨今でも、就職活動がうまくいかないことで苦しむ若者は多い。
自分に自信がもてずに将来への希望が見出せないこともあり、就職活動のスタートラインに立つことも難しい。一方、卒業後にニートやフリーターとなり、働きたくても就職できない若者たちもいる。
こうした若者に対して、リクルートホールディングスは、全国のNPOや教育機関と連携し、無料の就職応援プログラム「ホンキの就職」を展開している。2011年４月の開始以来、５年半で約２万人が参加した。そのうち60％以上が内定を得ることができたという。
■自己肯定感を育み、就労支援
ホンキの就職は、グループワーク中心の実践型「4Daysグループワーク」と、自己PRと面接に特化した1日集中型の「１Dayセミナー」に分かれている。
グループワークでは3～4人のグループに分かれ、仲間と協力し合いながら就職活動を行う。まずは「可能性発見ツール」で関心を広げ、就職マーケットへの理解を深めていく。その後、参加者同士で面接ロールプレイングを行い、自己PRの練習をしたり、改善点を話し合ったりする。
ホンキの就職の参加者は、就職活動の経験が少なく、面接に対する苦手意識が強いといった特徴があり、自分への自信がないことが要因となっている場合も多い。
そこで、グループワークでは、単に就活ノウハウを教えるのではなく、参加者同士が仲間になり、自己肯定感を育み、個人の持つ力を発揮させることを意識している。失敗しても励まし合える仲間がいれば、次への挑戦もしやすくなる。
リクルートホールディングス ソーシャルエンタープライズ推進室 CSR推進グループの白坂ゆきグループマネージャーは、「進路や就職先などを自分で選べるということが、人生を輝かせることにつながる。そうした選択肢を持てる環境をつくることがリクルートのCSRの一つ」と話す。
■生活困窮者の住まいを保証
若者の自立には、就職だけではなく、住む場所も重要だ。リクルートフォレントインシュアでは、親や親戚に保証人になってもらうことが難しい状況にいる人たちに対し、賃貸保証サービスを提供している。
利用者は家賃１カ月分の50～100%程度の保証料をリクルートフォレントインシュアに支払うことで、保証人なしで家を借りることができる。
リクルートフォレントインシュアの豊田茂取締役は「非正規労働者やシングルマザーなど年収が低い傾向にある人は、収入に対して家賃が高くなってしまい、審査に通らないケースが多い。周りに頼れる人がいない場合、保証人を立てられず、住む場所を確保できない。こうした人たちに保証サービスを提供することが事業の目的」と説明する。
同社が力を入れて取り組むのは家賃滞納者に対しての相談支援だ。「家賃を払えなくなる人のほとんどは急に職を失ってしまったことが原因だ。危機的状況にいる家賃滞納者に、電話でゆっくりと話して相談に乗る。彼らに伴走していくことが大切」と豊田取締役は語る。
家賃が支払えなくなってしまうと、焦りや戸惑いからどう行動すればよいかが分からずパニックに陥ってしまうケースも多い。誰にも相談できずに何カ月も滞納し、最後は消費者金融に頼ってしまう人もいる。
同社では悪循環に陥る前に、丁寧に相談に乗り、国の「生活困窮者自立支援制度」の相談窓口などにつないでいく。同制度は最大９カ月分の家賃を補助してくれるなど、生活保護に至る前の生活困窮者へのセーフティーネットとなる。
豊田取締役は「制度ができたことで、家賃が支払えなくなった人の自立をサポートすることができる。だが、まだ一般に制度が知られていないので、我々からも個人や業界団体にも制度を活用するように情報提供を行っている」と言う。
住まいは人が生きていく上で基本となるもの。同社は、職を失い家賃が支払えないという危機的な状況にあっても、誰もが自立した生活を取り戻せるように伴走していく。
