「バックキャスティング」とは、スウェーデンの軍隊に端を発する思考法で、日本でもこの数年、「サステナビリティ経営」における目標設定と実現を目指す手法として注目されています。
オルタナ本誌15号(2009年8月発売)でも『「バックキャスト経営」を考える――企業のCO2削減はなぜ長期目標が必要か』という特集を組んだことがありました。
バックキャスティングとは、釣り竿を後ろに振ることです。その対義語、つまり釣竿を前に振るのは「フォアキャスティング」です。これが転じてforecast(予測する)という言葉になりました。
企業を含めたあらゆる組織が、あるいは国家でも個人でも、これからの目標を設定する時に、現在を起点にして「来年はここまでできる」「再来年はここまで」という思考法がフォアキャスティングです。
これに対して、バックキャスティングは、遠い未来に「あるべき姿」(目標)を設定して、それを実現するためのロードマップを未来起点で考えます。
例えば、目の前にある高い崖を登りたいとします。地面に梯子を立てて、一段ずつ上っていくのがフォアキャスティング。崖の上から縄梯子を下して、それを上がっていくのがバックキャスティングです。
ビジネスの世界で有名なバックキャスティングの事例は、トヨタ自動車の「環境チャレンジ2050」です。同社は2015年10月14日、新車製造時のCO2排出を90%削減するなど、6つの目標を掲げました。