屋久島に脈々と流れる自然を守ってきた誇り

屋久島は1993年白神山地とともに日本で初めて世界自然遺産に登録された。評価された最大の理由は、縄文時代から人が住んでいたのにも関わらず、多様で豊かな自然が多く残されていることだ。今も、樹齢数千年の天然杉や、ウミガメ、ヤクシカ、ヤクザルなどが生息する豊かな生態系を体験するために国内外から多くの観光客が訪れる。
世界遺産の選定理由にあるように、現在残された屋久島の自然資産はこれまでも何度も失われる危機に瀕しながらも島民の力により守られてきた。
屋久島では古代から島民は山に霊力がある、叉は山に神が住むと信じ、山そのものを崇拝の対象とする山岳信仰があり、それぞれの集落に流れ込む川の上流に位置する山をそれぞれの御嶽としてきた。

森にある巨木もご神木ととらえてきたが、江戸時代、薩摩藩の支配が及び、強力な力をもった島津家によって年貢の代わりとして杉を納めさせ、江戸末期までに5~7割の杉が切られたという史実が残っている。
その後も昭和30年代には国有林となった屋久島の杉は大量伐採されるが、昭和40年~50年代の島民の原生林保護運動などにより多様な生態系が後世に残される結果になった。その保護運動の結果、残った森が後世評価されて世界遺産に登録されたのである。
松田前環境政策課長が「島民には自然に生かされてきた誇りがある」と話すように、島の山岳信仰や「屋久島魂」と呼ばれる反骨精神は、今日の「人と自然との共生」や「循環型社会の構築」を作る根底に脈々と流れている。それがあるからこそ自然エネルギー100%も可能になったと言えるかもしれない。

島ではまだ開発されていない水力発電、風力発電などのポテンシャルは大きい。しかし、大手電力会社を経由していない場合は、余剰電力の買取がされないという。
北欧などでは自然エネで作られた電気を売買する市場が確立し、自然エネ由来の電気を多く持つ地域が大都市の電力消費を支える構図も生まれている。屋久島が今後自然エネ300%、500%になれるような仕組みが整うことが、日本の電力事情を変えていく一つのカギになるかもしれない。