森の力で生産性が向上、脳波測定で実証

■都内と信濃町で実証実験
実験は、首都圏で働く労働者20名(男性15名、女性5名、平均年齢37.2歳)を対象にA、Bの2グループに分け、Aグループは都内での実験後に信濃町で実験、Bグループは信濃町での実験後に都内で実験を行った。実験の内容は「座位安静開眼状態での脳波測定」、「自覚症状テスト」、「クレペリンテスト(実施中脳波測定)」など。

結果として「森林環境で過ごすことにより、都内オフィスよりも自覚的な心身の状態が有意に良好になった」、脳波調査でも「80%の対象者が森林環境の方が都内オフィスよりも興味が高まり活性化する傾向がみられた」。また、森林環境と都内オフィスで集中力を要するクレペリンテストを実施したところ森林環境の方が「作業効率が向上している傾向がみられ」、脳波測定でも、「森林環境では興味関心が向上し、心穏やかに快適性を保ちながら作業をしていることが有意性をもって検証された」。

さらに、森林環境での作業は「疲れがとれやすくリラックスして作業している」ことも推測される結果が出た。森林環境でのリモートワークがワークパフォーマンスを向上させ、生産性を高め、さらによりよい心身の健康状態を保てることが科学的な裏付けが得られた。

森林に接した環境では、脳が活性化している
作業成績も都会のオフィスより向上
森林に接した環境では心穏やかに作業できる

■森林環境でワークパフォーマンスを高めよう
森林環境で働くことの生産性向上に関しては、より多くの実験・検証が必要だと思うが、少なくとも森の力が癒しだけに留まらないことは確かだ。この実験結果は、リモートワークを積極的に取り入れようとしている企業にとって社内を説得する強力なエビデンスになる。企業が働き方改革を進める上での重要な検討材料の一つにもなるだろう。持続性のある社会を構築する上でのヒントにもなるはずだし、地方経済の活性化などにもつながる。そういった意味で大きな価値のある実証実験だと思う。

信濃町とNPO法人ネイチャーサービスは、町の遊休施設を活用した「信濃町ノマドワークセンター」を開設し、短期間でも利用できるリモートワーク拠点として、企業に施設とサービスを提供していく。施設は現在、開設に向けて工事中で、2019年5月中旬に内見会を開催する予定だという。(写真提供:NPO法人 ネイチャーサービス/信濃町)

信濃町ノマドワークセンターのプレゼンテーションをする赤堀哲也氏

◆信濃町ノマドワークセンター

フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

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