
「カギ針1本あれば、家事の合間や移動中などいつでもどこでも仕事ができる。女性たちにとって、暮らしと仕事を両立する働き方」と関谷さんは言う。カギ針の活用でいわばリモートワークを可能にしたかたちだ。
労働の対価は、製作したバッグの個数に応じて支払われる。関谷さんによれば、「以前の仕事よりも労働時間は少なくなる一方、報酬は増えた」という編み子さんの声が多々あるという。スルシィは工房も運営しており、家でなく工房で仕事を進めることも可能だ。

関谷さんが大切にしていることの一つは、それぞれのバッグを一人の編み子さんが最初から最後まで仕上げるスタイルだ。一つひとつのバッグには編んだ人のサインが記入され、消費者は付属のハガキで直接メッセージを送ることもできる。
スルシィのホームページでは、編み子さん一人ひとりの多様な背景や近況などが、顔写真入りで生き生きと紹介されている。「単なる働き手や歯車のようには見ていない。一人ひとりを人間として見ている。彼女たちがいなければ、スルシィのバッグは成り立たない」と関谷さんは話す。

■刑務所でのバッグ製作―出所後の仕事を