パネルディスカッションでは、上記報告や問題提起を踏まえ、企業は投資家とどのように向き合うべきか、どのような情報を開示するべきか、意見交換がなされました。

企業がどのように投資家と向き合うべきか、という点については次の意見が示されました。

「企業の将来に向けた成長の確からしさは財務情報だけでは考えることができなくなってきた。投資家の関心は非財務情報にも向いており、足元の業績、今期の業績だけでなく、ガバナンスなどの非財務情報についての対話が増えている。投資家は、過去の積み上げに基づいて今後もこの企業が成長していくかどうかを予測できなくなってきており、どう評価したらいいのか手探り状態である。これから企業と市場は対話を重ねて、一緒に考え、成長のためのベストプラクティスをつくっていくことが必要である」

「いまはまだ、企業価値を一緒に高めようとする対話はできてない。企業側もどのような情報を提供したらいいのか、投資家も何を評価したらいいのか、互いに分からず手探りである」「中長期的視点で評価がなされるということがESG対応の促進につながっている。事業の成長のみならず社会とともに成長していくことが求められている。企業にとっては、投資家とのコミュニケーションによって、自分たちがいま何を求められているのか考える機会になっている」

「投資家はIRチャネルだけで情報を集めているわけではない。トップと現場の言っていること・やっていることが一致しているかどうかを見ている。企業は、IRも広報も人事も、というように一貫的な表現が必要であり、それは投資家に限らずステイクホルダーとの向き合い方において求められるものである。統合的なコミュニケーションが必要だ」

非財務情報に対する関心が高まっているとはいえ、何を評価するか機関投資家と企業の間で相互理解がなされているわけではなく、今後コミュニケーションを重ねていく必要があるということが明らかになりました。

またどのような情報を開示するべきか、という点については「情報開示のルールも考えていく必要がある。B to Cのルールだけではなく、B to Bのルールも必要である」「ネガティブ情報も開示するべきである。コミュニケーションを通して、社会から何を求められているのかということを社内でも理解してもらいやすい」「情報を発信するだけではなく、ステイクホルダーの意見を経営に反映する、ステイクホルダーと議論してよい経営を一緒に作っていくことが大切である。投資家が企業を選ぶだけでなく、企業が投資家を選ぶ時代になっている。優良な資本の獲得競争に勝って、いかに優良な投資をしてもらうのか、というのが今後のIRの責任ではないか。そのカギを握るのがESGであろう」といった意見が示されました。

ネガティブ情報も開示して正直に対話すること、それを通して社会のニーズを社内で共有し自らの姿勢を省みることが必要であるとの指摘は、プレナリーセッションでもなされたものであり、重要なポイントであると考えられます。

◆齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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