そんな中、この分野で新風を巻き起こしているのがNPO法人WELgee(ウェルジー、Welcome Refugeeの略)である。この団体は「難民はかわいそうな人たちと思われがちだが、実際には才能と経験豊かな注目すべき人材である。是非日本社会で雇用すべき」と頑張っている。確かに、彼らは母国で迫害を受けながらも、大学、大学院卒など高学歴で、医者、プログラマー、会社経営者、建築士もいる。

しかし、日本で働くのに法的な問題はないのか。日本に逃れてきた難民が認定申請をすると8か月は就労許可が出ない。この間は一応給付制度があるものの、審査が厳しく、多くの人は収入はおろか、寝る場所も食べるものもないホームレス状態に置かれる。このため、一般の難民支援団体はセーフティ―ネット支援に注力しているが、ウェルジーは、難民が「働くことが生きること」との訴えに耳を傾け、施しを受けるだけでなく自立にチャレンジする難民に寄りそうことにした。「死の8か月」を何とかクリアーすれば、「特定活動」という在留資格で就労ビザが出るからだ。

今ブームになっているSDGsでも目標8で「働きがいのある人間らしい雇用促進」をうたっている。国や地方自治体が動かないなら、誰も取り残さないというSDGsの精神を守るため企業の協力が必要になる。そこでウェルジーが思いついたのが、研修を終えたあと、職業を紹介しようという就労伴走事業である。マッチング、面談、インターンを経て雇用してもらうのだが、ネックがある。まず、企業側の認識不足。合法的に就労許可を得ていること自体を知らない。能力の高さや優秀さも理解がない。さらに文化や宗教の違いが加わるとハードルは一気にあがり、どうしても企業は採用を躊躇しがちだ。

しかし、ITを中心に5人が正社員に採用されるなど着実に実績をあげている。大企業とも話が進んでいる。新宿でホームレス状態だった20歳代のアフガン難民を雇用したIT企業、アダワープの安谷屋社長は「迫害から逃れ国に帰れない彼らは根性もあり、技術の伸びも早い」と評価する。

ウェルジーでは合わせて大学や企業、自治体向けに難民の人が参加する研修・ワークショップ事業を行っている。難民、貧困、環境など地球規模課題に疎く、自社のリソースを活用しきれていない企業にもっと学び、企業自体の可能性を広げてもらうのが狙いだ。これまでに、ライオン、日本電気、富士ゼロックス、アクセンチュアなど13社に出向いている。これが採用に発展することも期待している。

前述の通り、日本の難民認定率は低い。認定されないと、再申請や裁判、あるいは不法滞在、収容所への拘束、強制退去へとつながる。認定の結果を待たずに、難民が日本でちゃんとした仕事に就き、生きていけるなら、それはすばらしいことだ。何より日本社会に貢献してくれる。経済界の協力で、実質的に難民として認定されたと同じ効果が生まれるからである。

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