英国の金融シンクタンク「プラネット・トラッカー」は9月17日、日本の水産上場41社に投資や貸付を行っている企業が「バブル崩壊に直面する可能性がある」と指摘した。報告書「投資家が評価する海とビジネス:金融市場から見る日本の水産業の利益とリスク」で、この41社に対する投資家のリスクを分析した。(オルタナ編集委員/海洋ジャーナリスト=瀬戸内千代)
それによると、日本の水産物生産高が30%減った2009年から2018年の9年間で、国内水産上場企業41社(※)の総合株価は210%増と、日経平均の198%を上回っていた。その背景には、水産物の輸入増加と、養殖業への投資増加がある。
しかし、世界の主要漁業資源は3割が乱獲状態、6割が満限利用(これ以上の漁獲は乱獲となる状態)であり、持続可能な漁業は1割にも満たない。養殖業も、その多くが繁殖や餌のために天然魚に依存している。気候変動の影響や、漁獲量減少や操業コストの高まりによる利益率低下が、投資家にとってリスクとなる。
さらに報告書は、41社の不透明性を問題視している。41社は世界に計2,891社の子会社を持つが、所有する船舶による漁業などの客観的なデータが不足している。投資家向けの詳細資料が日本語のみの場合もある。
プラネット・トラッカー創設者のマーク・カンパナーレ氏は、「漁獲資源が業界の再成長を支えられるほど回復しなければ、投資家は近い将来、水産業のバブル崩壊に直面する可能性がある」と警告した。
一方、米国の科学雑誌『サイエンス』2019年10月号には、短期間の漁獲量削減によって日本が2065年までに年間約6000億円の追加収益を見込めるとする試算が掲載された。