■技術を開放し産業を興す

ラカントの歴史

ベトナムの国境近く、広西チュワン族自治区北東部に桂 林は位置する。山水画のような美しい景観とは裏腹に、当時の桂林の貧困は深刻だった。

羅漢果栽培地を訪れた更家は「ここで新たな産業を興せないか」と考え、現地の大学と協同し、植物研究をスタート。世界で初めて羅漢果の栽培方法や甘味成分の抽出、構造式の解明などを進めた。

およそ3年がかりで研究を重ね、完成したのがカロリーゼロの自然派甘味料「ラカント」だ。エリスリトールに「羅漢果エキス」を加えて製造した。1995年に発売すると、糖尿病患者だけではなく、ダイエット志向の女性を中心に一気に広まった。

その後、サラヤは独自の製法を確立し、砂糖の300倍もの甘さのある甘味成分「高 純度羅漢果エキス」の抽出に成功。このエキスを配合した「ラカントS」を1999年に発売した。同時に、ラカントSを摂取しても、血糖値やインスリン分泌度に影響しないことを学術的に証明した。

健康・自然志向の高まりを受けて、順調に市場は拡大していった。だが、更家は「羅漢果は桂林のもの。外国の企業がこれを独占するのは、桂林の発展にならない」とし、国際的に技術開放することを決めた。日本国内では特許登録したものの、「会社の利益よりも桂林を活性化し、農民の生活を向上させること」を貫いた。

「ラカント」シリーズには契約農家が無農薬で栽培し、完熟した果実のみを使用している。桂林にある自社工場で徹底した品質管理を行い、抽出した原料を日本の自社工場で最終製品に加工する。

サラヤコミュニケーション本部広報宣伝統括部の廣岡竜也統括部長は、「国際特許を取得しなかったことで、競合は増える。ビジネス環境は厳しくなるが、桂林の発展を重視し、品質で妥協せず、『健康に貢献する』というポリシーはゆるがない」と力強い。

■世界に広がる「ラカント」

経済発展に伴い、中国やインドなど世界で糖尿病患者は増え続けている。SDGs(持 続可能な開発目標)の目標3「すべての人に健康と福祉を」でも、糖尿病を含めた非感染性疾患による死亡率を3分の1に減少させることがターゲットとして定められている。

「糖尿病患者にとって、糖質の摂取量には注意が必要。『ラカント』を使うことで、食べ慣れたおいしい食事を取れることは、生きがいにもつながっている。血糖値の上昇の抑制はさまざまな生活習慣病の予防や改善にも貢献できる」(廣岡統括部長) 「ラカント」シリーズは、世界中で販売しているが、人工甘味料を敬遠する米国では特に好調だ。

世界的なレストラングループ「NOBU」(ノブ)では、 シュガーフリーの「SUSHI」にするため、ラカントを採用。一般消費者だけでなく、国内外のシェフやパティシエから注目を集めている。売り上げは前期比2桁増と順調に推移し、社会課題の解決とビジネスの成長を実現する好例といえそうだ。

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