人間の安全保障に生きた「小さな巨人」緒方さん

イラクのクルド難民危機では、トルコ側から押し返された難民を前に、慣例を破って国境を越えなくても支援に当たるという英断を下した。バルカン紛争ではボスニアで民族和解を図る「共生の想像」プロジェクトを考案した。

アフリカ大湖地域における大量虐殺と救済、アフガニスタンでの大量難民の支援と帰還などその功績は数え上げればきりがない。

難民問題ではクリントン米大統領やシラク仏大統領説得に自ら乗り出したというエピソ-ドが残っている。小柄だが、度胸が良く、積極果敢。世界の指導者から「スモ-ルジャイアント」(小さな巨人)として尊敬されたというのもうなずける。

かつてこれほど国際的に評価された日本人もいまい。緒方さんという人を形づくったものは何だろう。

犬養毅元首相は彼の内閣の外相、芳沢健吉に長女を嫁がせた。芳沢は駐仏大使、国際連盟日本大使となり、満州事変の処理では大変な苦労をした。その娘がフィンランド公使をつとめた外交官、中村豊一と結婚、生まれたのが貞子さんである。

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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