■破壊が進む神の山、石灰石を使うということ

秩父を訪れ、知らずに武甲山を眺めた人も、大きく削られた山肌に驚く。小口恵美香さんもそんな人の一人だ。かつて養蚕が盛んだった秩父に、衣の歴史を学びに他県から訪れたところ、たまたま目にした武甲山の異様さに衝撃を受けた。

小口さんは「これだけ削り取られていると、泥水が流出したり、河川の形状なども変化していそう」と心配する。

筆者の一人、栗岡も、想像を超えた武甲山の姿に言葉を失った。これが奥武蔵の名峰と称えられ、山岳信仰の象徴であった山だろうか。武甲山は、深田クラブ選定の「日本二百名山」にも数えられている。

採掘した石灰石が、生活に必要な建造物や、長期に渡って使用できる必需品を作るために使われるのであれば、やむを得ないかもしれない。

しかし、それがもし使い捨ての容器包装や無料で配布される販促品などに使われるのであれば、そのもったいなさに辛くなる。

元の形を知りたいと山麓の武甲山資料館に入ると、1960年頃の武甲山の写真が展示されていた。既に削られている部分はあるが、威厳に満ちた美しい佇まいだ。

同館のパンフレットによると、武甲山は「神奈備山」(かんなびやま、「神様のこもる山」の意)として山麓の人々に崇められ、自然科学から見ても、地質、動物、植物など他に類を見ない貴重な存在だった。

しかし、北面および頂上の石灰岩採掘によって、山容は変貌し、自然科学としての価値も消失するため、当時の武甲山の全貌を後世に伝えるために、資料館を設立したとのことである。

資料館には、緑化しながら採掘を進めているとあるが、石灰岩ならではの植生や水源涵養機能などが元に戻ることはない。

採掘現場を眺めると、国産原料だからといって無闇に使ってよいわけではないことがよくわかる。

石灰石は石油と同じ枯渇性資源

石灰岩の成因には生物起源と化学的沈殿の2種類がある。生物起源とは大昔、サンゴや貝などの海の生き物の遺体が堆積し、長い時間をかけて石となったものだ。

石油や石炭と同様に限りある資源なのだ。資源の観点で考えると、LIMEXが本当に回収され、元と同じような製品にリサイクルされるなら、石灰石は無駄にならないのかもしれない。

しかし、もし石灰石ペーパー類のリサイクルルートが確立されないのであれば、資源の無駄遣いになるし、さらには既存の紙やプラスチックのリサイクルルートを妨害する。

また、もし市中に出回り、自治体の可燃ごみに出された場合は、石灰石は焼却灰を増やし、最終処分場の寿命を縮めることにもつながる。そのため、回収できなくなるような使われ方は考えものだ。まして使い捨てられるような製品は問題外だろう。

LIMEXを採用する企業や自治体は、使い捨て製品や回収不能になるような製品を作らないこと、そして使用済み製品をTBM社とともにしっかり回収し、リサイクルルートに乗せることに注力してほしい。それが新素材を普及させようとする際に、果たすべき最低限の責任だ。

「石灰石ペーパー類」の環境負荷は本当にエコか(上)
「石灰石ペーパー類」の環境負荷は本当にエコか(中)

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