世界を席巻する電動キックボードの光と影(下)欧州編

■ロンドン、求められる法規制

ベンチに立てかけて放置された電動キックボード

英国でも電動キックボードは「eスクーター」と呼ぶ。公道で使うのは違法で、私道でしか使えない。歩道を走るのも禁止だ。見つかれば300ポンド(約4万4千円)の罰金を払わなければならない。

そのため、合法化実現のための運動をする人たちがいる。「交通法規を改定せよ、電動キックボードは車の代わりになるので環境に良い」というのがその主張だ。

ロンドンでは7月に初めて死者が出た。ユーチューバーとしても知られるテレビ司会者の女性で、ロータリーで衝突事故を起こし死亡した。その直後、14歳の少年が衝突事故で大怪我をした。

それでも合法化を求める声は強い。政府は検討しているそうだが、いつになるかわからない。

スウェーデンのメーカー「ヴォイ・テクノロジー」のCEOは、「イギリスがEU(欧州連合)を離脱すれば、正式な認可は遅れるだろう」と予想する。12月12日の下院総選挙で、与党の保守党が勝利し、2020年1月末のEU離脱が決定的になった。正式認可は遠のきそうだ。

合法化には、いくつかハードルがある。電動キックボードは、モーターで動くその他の移動器具と同じ法律で規制されている。法律が要求する部分を技術的にクリアーできれば、車両使用税を徴収したり、車両を登録する「運転手・車両免許庁(DVLA)」に申請することができる。

しかしそこで認可されても、1835年に制定された法律が「機械で動く乗り物は道や自転車道を走ることができない」としているので、この分類に入る電動キックボードはそれらの場所で使うことができない。

シェア電動キックボードの会社「Bird」は、法律の隙間を縫ってクイーン・エリザベス・オリンピックパークの私道で使えるようにした。合法だが、その範囲だけでは遊びとしてしか使えない。

違法でも使いたい人は多く、電動キックボードを使ったロンドン観光ツアーまで出てきた。数が増えるのは世界的な動きで止められない。違法状態のまま、無策で事故を増やすよりも、合法化先進国で何が起きているかを見て、法律を変えて規制をした方が現実的ではないだろうか。

 

世界を席巻する電動キックボードの光と影(上)米国編

世界を席巻する電動キックボードの光と影(中)台湾編

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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