新型コロナ「東京オリパラも注意が必要」有識者が警告

国際環境保護団体グリーンピース・ジャパンと国際環境・開発情報研究所(井田徹治代表)は5日、都内で勉強会を開催、国立環境研究所の五箇公一 生態リスク評価・対策研究室長が生物多様性を脅かす外来種について講演した。五箇室長は新型コロナウイルスについて「急激な患者数の増加はグローバル化が進んだため。東京オリパラでも注意が必要」と話し、「野生動物を媒介とした人獣共通感染症が懸念される。生態系の乱れが人間社会に深刻な問題をもたらす」と警告した。(松島 香織)

「日本は地産地消を目指すべき」と五箇公一 生態リスク評価・対策研究室長

「生物多様性」について、五箇室長は「階層性をもつ種の多様性のことであり、種の集まりが生態系である」と話した。ひとつひとつの種の中にも遺伝子レベルがあり、多様性があるからこそ遺伝子が進化し、それにより種がさらに多様化するのだという。

生態系の中でも様々な地形や気候などの環境の違いがあり、独自の生態系が進化し独特の景観が生み出される。「遺伝子というミクロから景観という大きなスケールの中で生きものが織りなす環境が、生物多様性」だと五箇室長は説明した。

人間に必要な水や空気などもそうした生態系機能から供給され、生物圏と言われる安定した空間の中で生かされている。生物多様性とは人間が生きていくうえでの必須基盤であり、環境の多様性が社会や文化を発達させ、その国独自の文化を生み出しインバウンドとして価値をもつ。

「生物多様性とは社会を発展させる基盤でもあり、生物多様性なくして人間の生活は成り立たない。環境保全や動物愛護が生物多様性の概念ではなく、人間が生き残るためのエゴイスティックな活動。人間社会を発展させるためにいかに生物と共生していくかを考えるべき」と五箇室長は強調する。

かつて日本は「富国強兵」のために外来種を輸入したが、それらの種が日本固有種を駆逐してしまった。生物多様性を支えているのはローカリティだが、都会化やヒートアイランドで環境は一律化してしまい、さらにグローバル化が進んだことで外来種は増加しているという。

日本は近代化により自然循環型の田畑を工業化したり、バイオエネルギーを使うことで生産性を上げて来た。その結果、里山が崩壊しまった。生態系が劣化した劣悪な環境で生き残れるのが外来種だという。「外来種が増加したのは日本人のライフスタイルの変化が大きな要因」だと五箇室長は指摘する。

また、1970年代からHIVやSARSなどの新興感染症が、サル類やコウモリなどの生物からもたらされたことを紹介。自然と人間の生活環境の境界線が壊れたことで、野生動物が人間の生活圏に入り込み、人獣共通感染症が懸念されている。

工業化し生産性を上げたにも関わらず、日本は農産物の輸入に頼っている。「インポート、インバウンドに依存している限りこうした問題は続く。新型コロナウイルスの患者数が急激に増加したのはグローバル化が進んだため。東京オリンピック・パラリンピックの会場は森林付近にある場合が多く、野生動物やダニが増加しないよう対策を進めている。ウイルスやダニも生態系の一部であり、うまく共生するにはどうしたらよいかを考えることが重要」だと締め括った。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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