小泉環境相が石炭火力輸出の厳格化を表明、脱炭素へ

小泉進次郎環境相は2月25日、パリ協定の目標達成に向け、石炭火力発電所の輸出政策の見直しに向けて協議することを表明した。6月にまとめるインフラシステム輸出戦略の骨子に反映させる。小泉環境相は「関係省庁と4つの要件について見直すことに合意し、脱炭素社会の実現に向けて一歩踏み出した」と会見で話した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

日本が批准するパリ協定では、平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるという長期目標を掲げる。日本を含むOECD諸国は2030年まで、そのほかの国も2050年までに石炭火力発電をゼロにすることを求めている。

脱炭素社会の実現に向けて、世界では化石燃料産業からのダイベストメント(投融資撤退)が進む。一方で、日本政府や日本企業は国内外で石炭火力発電所の新設を積極的に進め、国際社会から批判を浴びていた。

インドネシアのインドラマユ石炭火力発電所の拡張計画を巡っては、現地の地裁が環境計画許認可の取消判決を出した後も訴訟が続いている。

日本企業やJICA(国際協力機構)に事業撤退を訴えるために来日した現地住民からは「事業が続けば農地を奪われる。この先どうやって生きていけば良いのか」「既存発電所の排水や石炭を運ぶ船による水質の汚染で漁場が制限され、収入が激減した」といった苦しい胸の内を明かされた。

今回の輸出要件の見直しに対し、国際環境NGOのWWF(世界自然保護基金)ジャパンは歓迎する声明を発表した。WWFジャパンの声明は以下の通り。

WWFジャパンは、政府の議論がいわゆる「要件の見直し」を超えて(※1)、公的資金による石炭火力発電所への支援を原則禁止にする方針を採択することを期待する。

日本は、現状、海外の石炭火力発電所に対して、世界第2位の規模で公的資金支援を提供している(※2)。

一度建設されれば数十年は使うことが想定される石炭火発の輸出は、支援対象国のエネルギーを石炭依存に固定化してしまうため、公的支援を投入して優先するべき技術ではない。
そして、現状、もはや日本は中国に対しても格別に効率面で優れた技術を提供しているわけではない(※3)。

石炭技術ではなく、再生可能エネルギー関連技術、エネルギー効率改善技術、そして、それらを普及・活用できる社会システム構築の分野や、適応対策の分野での支援をより重視するべきである。

※1 政府「エネルギー基本計画」の中では以下の様に「要件」が定められている。「エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、相手国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭である超々臨界圧(USC)以上の発電設備について導入を支援する。」

※2 Endcoal. Global Coal Public Finance Tracker.
https://endcoal.org/finance-tracker/

※3 自然エネルギー財団(2019) 「インフォパック:日本の石炭火力輸出政策5つの誤謬」
https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20200212_coal.php

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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