新電力のみんな電力(東京・世田谷)は8月4日、ウェビナー「成長戦略としての脱炭素経営」を開催した。登壇者の一人、花本和弦・日清食品ホールディングスサステナビリティ推進室室長は、脱炭素化の取り組み事例として、在宅ワークでの再エネ導入を紹介した。ウェビナーには約1000人が参加し、脱炭素化への関心の高さがうかがえた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

2015年12月の「パリ協定」採択以降、気候変動への危機感から、脱炭素化が急速に進んでいる。パリ協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えるために、各国に「2050年までにカーボンニュートラル(実質ゼロ)」を実現することを求めている。

8月上旬にもIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第6次評価報告書を公表する予定で、気候変動の影響が詳細に報告される見込みだ。

CDP気候変動コンサルティングパートナーであるウェイストボックス(名古屋市)の木塚晴久氏は「自社だけではなく、サプライチェーン全体でのCO2排出削減が求められている。もはや気候変動対策をしないことは大きなリスクになる」と話す。

全体の9割占める「間接排出」が課題に

「脱炭素経営」に舵を切ったカシオ計算機は、グループ全体のGHG(温室効果ガス)排出量を2030年度までに38%削減、2050年までにゼロを目指す。

同社のGHG排出量は、スコープ3(原料調達から製品の廃棄に至るまでの間接排出)が95%を占める。スコープ1(事業活動に伴う直接排出量)とスコープ2(事業活動で使用した熱・エネルギーの製造段階における間接排出量)は合わせて5%に過ぎない。

スコープ3のなかでも、「購入した物品・サービス」と「製品使用時」の割合が約8割を占めるという。同社はこのスコープ3で「2030年度までに30%削減(2018年度比)」という目標を掲げた。

登壇した同社の小林誠氏は「調達を担当する生産本部と連携して、『GHG排出実績の把握状況』と『GHG削減目標の有無』の調査を始めた。サプライヤーの取り組み状況に応じて、エンゲージメントを実施していく」と話す。

「もともと当社には、環境負荷の低いモノづくりが重要だという価値観がある。脱炭素に踏み込んだ取り組みを始めたことは、素材調達や商品開発にも良い刺激になっている。最近では、若い世代の価値観の変化も実感しているし、国境炭素税の議論もある。近い将来、環境価値を全面に出した商品開発につながりそうだ」(小林氏)

同社は再エネへの切り替えも進めている。小林氏は「再エネの調達価格は低下傾向にあるものの、全体として見ればコスト増になった。だが、取引先やお客様といったすべてのステークホルダーに、当社の姿勢を示すことが重要だと考えた。再エネへの切り替えは、コストではなく、再エネ拡大に向けた投資だと認識している」と語った。

再エネや代替肉でCO2を削減

すでにSBT認定を受けた日清食品ホールディングスは、省エネや再エネへの切り替えなどを通じて、2030年までにCO2排出量30%削減を目指す。包材・具材の改良や代替肉(大豆ベース)の使用などで、スコープ3では、15%削減の目標を掲げた。

自社の事業活動だけではなく、在宅ワークでの再エネの導入も進める。社員一人ひとりが気候変動問題を「自分ごと」ととらえ、具体的な行動につなげてもらおうと、みんな電力と連携し、自宅電気を切り替えた場合、毎月の電気料金に提携企業特別割引が適用されるプランを提供した。すでに約200人が参加したという。

同社の花本サステナビリティ推進室室長は「脱炭素化やサステナビリティを推進するためには、トップの強力な後押しも重要だが、同時に社員の意識も重要。在宅ワークの再エネ導入もその一つ。グループ全体で意識を高めるためにいろいろな施策を進めていきたい」と話した。