国際決済銀行(BIS)とフランス銀行は、新しい報告書「グリーンスワン:気候変動の時代における中央銀行の役割と金融の安定」を発表した。気候変動が金融界に思わぬリスクをもたらすと警鐘を鳴らした。新型コロナウイルスのように経済界や株式市場に思わぬリスクを与える「ブラックスワン」と同様、今後は「グリーンスワンにも要注意」という。(オルタナ総研コンサルタント=室井孝之)

既存のデータや経験では予測できない金融市場への衝撃や被害を意味する「ブラックスワン」の3条件は、①めったに起きず、②起きたら影響が大きい、③起きて初めて説明される、とされる。報告書はこのブラックスワンになぞらえて、金融システムに危機を引き起こし得る気候変動を「グリーンスワン」と表現し、将来の市場混乱リスクに警鐘を鳴らしている。
報告書は、「二酸化炭素の温室効果による気温の上昇」という課題に対し、「シナリオ分析に基づくアプローチ」の重要性を指摘した上で、中央銀行の役割を含め「政府、民間、市民社会など、国際社会全体の行動が、気候関連のリスクヘッジには必要」と強調している。
環境省が3月10日の「ESG金融ハイレベル・パネル」で公表した資料は、「グリーンスワン」(気候変動リスク)の脅威の特徴として、「発生確率は、過去のデータに反映されず、極端な値の可能性がある」、「影響が広範囲」、「生じる確実性が高い」、「自然資本に影響が及ぶため、金融的手法だけでは復元が困難」などの点を挙げている。