仏の新型コロナ対策(下):増えるDVと弱者支援

■ホームレスにホテルや学校給食を提供

ホームレスに解放されたカンヌ映画祭会場(C)palais-cannes©semec-fabre-08

路上で暮らすホームレスの人々は閉じこもることができず、一番感染の危険にさらされている。外出禁止でレストランが閉まり、食べ物をもらえるところがなくなった。公衆トイレ、給水所は閉鎖され、手を洗う場所もない。

「トイレに行くことができないので食べないようにしている人たちもいる」と、3月18日の独立系ウェブメディア「ギュイティニュース」は伝えた。通常は支援団体が見回り、食べ物や飲み物を渡すが、外出禁止令と一斉休校で活動できる職員とボランティアが減り、人手不足に陥った。それまでのボランティアの3割が70歳以上で、外出を控えるべき層になったことも大きかった。

見回りに行くときにするマスクも不足している。支援をするNGO やNGO連絡網35団体でつくる「警告」は、外出禁止が始まって3日経った3月20日のプレスリリースで支援現場の危機的状況を訴えた。

しかし政府はホームレス支援を考えていなかったわけではない。フランスには家賃滞納などにより住居から出される人たちを冬の寒さから保護するため、例年11月1日から3月31日まで住人の追い出しを禁止する法律がある。マクロン大統領は3月12日の演説で、今年は5月31日まで延期すると発表した。これで緊急宿泊所にいる1万4000人が、外出禁止期間中に路上に出されることはなくなった。

避難所については、ドノルマンディー都市・住宅担当大臣が3月21日、民間のホテル、ユースホステルの2000室をホームレス用に確保すると発表した。パリではすでに170室のホテルを確保した。

「アコール・グループ」は政府に600室を約束していたが、3月24日のプレスリリースで「グループ内の40以上のホテルでベッド千台から2千台をホームレスに提供する」と発表した。4つ星ホテル「メルキュール」「ノボテル」も運営する世界的なホテルグループが政府のホームレス対策に協力するのは前代未聞だ。

そのほかパリには感染の疑いがある家族を数週間、個室に隔離するセンターも作った。単身者用も含め、パリ近郊にあと2か所できる予定だ。

ボランティアの人手不足についても、政府は3月23日、市民の相互援助を促すプラットフォームサイトjeveuxaider.gouv.frを発表した。食料配布ボランティア希望者と支援団体のマッチングが主な目的だ。5400のNGOに食べ物を配布する「フードバンク」連絡網のジャック・バイエ理事長は、3月24日、ラジオで「5千人から6千人のボランティアが必要」と呼びかけた。プラットフォームサイトが軌道に乗ってボランティア不足が解消できることを祈りたい。

自治体の独自の動きもある。パリ市は3月15日から市の体育館15か所とシャワー施設をホームレスに解放し、一斉休校がなければ続くはずだった学校給食を、支援する人道団体に毎日提供することを決めた。給食の配布は団体が行う。

南仏のカンヌ市は、5月に催す予定だったカンヌ映画祭が新型コロナウィルスのため延期になったので、例年世界中のスターが集う映画祭会場を3月20日からホームレスに解放し、50人分のベッドと食事、シャワーを提供している。

3月18日の日刊紙「リベラシオン」によれば、支援団体は連帯・保健省と2日に1度電話会議を行っており、行政の支援を評価していると言う。

パリとその近郊のホームレスは3500人、 フランス全土で25万人がいる。

yuyamatest3

太郎 会員登録テスト

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..