セクハラ疑惑「なかったことにしていいのか」と社員

石川氏が代表取締役社長を辞任して2カ月が経とうとしている。売上高1300億円を超える企業で「オーナー」という肩書は珍しく、社内からは、どういうかかわり方をするのか分からないという声も出ているという。

だが、同社では、コンプライアンスの徹底とハラスメントの根絶に向けて着実に取り組みを進めている。5月から毎月、ハラスメントに関するアンケートや担当弁護士によるコンプライアンス研修を実施する。さらに、コンプライアンスやハラスメントに知見がある社外の有識者による監査機関の新設も予定している。

組織再編も行い、5月1日付けで、二宮さんが室長を務めていた「SDGs推進室」は廃止された。二宮さん自身は経営企画室に異動した。だが、SDGs推進室がなくなったからと言って、SDGsの取り組みがなかったことになるわけではないという。二宮さんは、「(SDGsの精神性は)スタッフ一人ひとりがマインドとして持つことを意識してほしい。部署問わず全スタッフで取り組むことが重要」と思いをあらたにする。

なぜ「声が上がらない」のか

声を上げることがこれほどまでに特異なことになってしまったのはなぜだろうか。実際、今回の二宮さんの投稿に対して、賛同の声が寄せられた一方で、多くの人から「会社から攻撃されたりしないか」というメッセージが届いたという。

このことは、いまの時代、不特定多数に向けて、所属している組織に対する違和感を口に出すことは「してはいけないこと」だと無意識のうちに思い込んでいる人が多いことを証明している。

会社で起きた問題なのだから、会社に言えと考える人もいるだろう。だが、これらの無意識の「区分け」こそが、声を上げづらくさせているのではないだろうか。

「会社の問題は、会社の関係者以外には話してはいけない」「会社の問題は、会社に言うべき」――これは一義的には正論かもしれないが、いまの時代、ユーザーでもありサービス提供者でもあり株主でもあるという人がいるように、ステークホルダーの境界線が解けている。会社のあり方も変わってきている。

そんな中で、閉じられた領域で議論を続けていては、「忖度」は起きやすい。そうなると、組織で困っている人や違和感に気付いた人はますます声を上げづらくなり、孤立化する。

日本では、セクシュアリティだけでなく、宗教や政治なども、家族や友人も含めてコミュニティ内で話すことをタブー視する傾向にある。

声を上げることを特別視する世の中から脱却するためには、区分けの前提を捨てて、包括的に考えることが必要ではないだろうか。二宮さんの投稿を見て、そう思った。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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