■目標は「根絶」ではなく、「排除」

一致団結して、新型コロナウイルスに立ち向かおうと、「ユナイト・アゲンスト・Covid-19」という標語を掲げる。「皆に親切に」というのは、「自主隔離」「手洗い」と並んで重要視されていることだ
© New Zealand Government (CC BY 4.0)

実は政府が目標を正式発表した3月31日の時点では、「排除」ではなく、「根絶 (Eradication)」という言葉を使っていた。一般用語としては、どちらをどちらに置き換えることも可能な2つの言葉だが、科学的には各々違う意味を持つ。「排除」は、「特定の媒介によって引き起こされた感染の発生率を、特定の地理的領域においてゼロに削減すること」だ。一方「根絶」は「特定の病原体による感染の、世界的な発生率を恒久的にゼロに減少させること」。国内の状況改善を目指す政府は目標を「根絶」ではなく、「排除」と改めた。

アーダーン首相と共に、ほぼ毎日記者会見を行っている、アシュリー・ブルームフィールド保健省代表によれば、政府が目指す「排除」とは、新しいケースをゼロにするというものではなく、新しいケースに対してゼロトレランス(ゼロ容認)を実践するということだという。感染者が出ても、数がごく少数で感染源が把握されており、早期にそれを特定の上排除し、厳しい国境制限を維持の上、新たにウイルスが持ち込まれないようにする。

現在のところ、新型コロナウイルスに対して使われる「排除」「根絶」という言葉に、世界共通の定義があるわけではない。ニュージーランド政府も目標に掲げながら、「排除」の定義を確定・明文化していない。

しかし専門家は、国としての定義を設けるべきだと主張する。理由の1つは定義づけをすることで、政府の目標が明確になり、一般市民の不安を解消するのに役立つからだ。さらに今後はほかの国とウイルス対策や経済交流など、さまざまな面で足並みをそろえていく必要が出てくる。そのためにも定義を明確にしておくべきだという。

5月5日にはオタゴ大学の疫学者3人と、データを知識に変換するための先端研究を行う組織、テ・プナハ・マタティニの責任者が、確固たる科学的定義づけの必要性を訴え、政府に提案書を提出している。

■今後こそ細心の注意を払う必要性あり

薬局に入店するために並ぶ人々。ソーシャル・ディスタンスをとるために、1度に店内に入れる人数は限られる。外で待つ人も前後の人と2mを空けて並ぶ
© Alan Tennyson (CC BY-SA 4.0)

ニュージーランドでは、新型コロナウイルスの感染拡大状況の度合いにより、市民が行うべき公衆衛生と社会的措置を明確にした、国内独自の「警戒レベル」が採用されている。約5週間にわたり、最も制限が厳しいレベル4を経験後、続けて4月28日からはレベル3に移行。5月7日にはさらにその下にあたるレベル2における規制の説明が、定例の記者会見で行われた。

11日には、レベル3からレベル2に移る日程が正式発表される。徐々に規制が緩やかになってきている。

ブルームフィールド保健省代表は、これからレベルが下がるにつれ、さらに慎重に生活する必要があるという。というのは、レベルが低くなると、隔離がもたらしたような感染予防は望めないからだ。少し油断するだけで、感染者数はまた増加することになるという。レベルが下がったからといって、決してウイルスの感染を免れたわけではないのだ。

7日の会見で、アーダーン首相は新型コロナウイルス感染症との闘いを、エベレスト登山になぞらえてこう話している。「今、私たちはエベレストに登って、半分まで下山したところといえる。また頂上まで登りたいと考える人はいないだろう。登る時よりさらに危険だといわれているのが下山。私たちは自信を持ちつつも、細心の注意を払って道を進まなくてはならない。道の途中でほかの人を助けながら」と、今後も感染症との闘いを軽視せず、慎重に進めるよう国民に訴える。同時に首相は、「私たちにはそれができると確信している」と、国民に絶対の信頼を寄せる面も見せている。

1 2