当然ながら、インパクト投資も新たな局面を迎えている。
インパクト投資は事業モデルが不確実でリスクも高いことから、軌道に乗った事業ばかりに集中しがちだ。しかし、初期の立ち上げと、スケールアップの両段階で資金が必要なのは論を待たない。
例えば、ベンチャー企業Sproxilは自ら開発した検証技術によって、途上国で頻発している偽造医薬品の流通を防止するビジネスをサブサハラで展開してきた。そこへAcumen Fund の投資179万ドルが入りさらなる技術革新とインドから東アジアにまで活動範囲を広げることが可能になった。インパクト評価を連動させながら適切な投資が求められる時代である。
また、インパクト投資自体の手段や手法も革新され多様化しつつある。フィンランドの企業MONIではブロックチェーン技術を活用して、プリペイド式のマスターカードを身分証明書や銀行口座を持たない難民に配布、金融サービスを提供している。
技術進歩によって、難民などこれまでは排除されていた多くの人たちがインパクト投資の受益者となり、また多様な層が投資できる時代が近づいていると指摘している。
こんな興味深い仕組みもある。デジタルバンキング・プラットフォームを活用した顧客参加型のインパクト投資Good Moneyだ。サイト登録者に対して同社の普通株を割り当て、株主となった彼らの投票で投資先を決定、収益の半分をインパクト投資か寄付に振り向ける。登録は無料でサービスはスマホで完結するという。
こうした情勢の中で、提案書では日本のインパクト投資について「認知と理解の不足」「社会的基盤の不足」「プレーヤーの不足」と3つの不足を指摘、この解消が不可欠と分析している。
そしてインパクト投資のエコシステムの必要性を訴えながら、その実現に必要な「投資に対するリテラシーの向上」「金融商品や資金供給チャンネルの充実」「投資家への情報提供の充実・投資家の行動変容の促進」など8つのアクションを提示している。
さらに、2025年に目指す姿を以下のように描いている。
・個人の16%が「インパクト投資」という用語を認識している
・「投資」によって社会課題の解決が進むと認識する人が全体の半数を超える
・投資の成果を、経済性と合わせて社会性の観点から把握することが重要と考える人が全体の半数に達する
・上記の観点を含む金融教育が現場で実践される
・金融機関や政府、GPIFなどの機関投資家が策定する指針やガイドラインにおいてインパクト投資がうたわれている
提言をどう生かすのか。GSG国内諮問委員会では政府や関係機関に働きかけたいとしているが、われわれ一人ひとりにも何かできることがあるはずだ。
(完)