編集長コラム
皆さんもコンビニや薬局の店頭で、シャンプーなどのボトル容器の最上部に貼られたシールを見たことがあると思います。業界では「アイキャッチシール」と呼ばれ、30年以上前から使われてきました。そのシールを花王が全廃するというのです。(オルタナ編集長・森 摂)
「小さいことだけど、シールは要らないよね」
アイキャッチシールは店頭で目立ち、商品を選びやすくするためのマーケティングツールです。5センチ角くらいの小さくて薄いプラスチック製ですが、買った後は捨てるだけ。花王では全商品アイテムのうち3割くらいに貼っていたそうです。
それを2021年末までに全廃することになったきっかけは、澤田道隆社長の一言でした。「小さいことだけど、シールは要らないよね」。

同社は2018年10月に「私たちのプラスチック包装容器宣言」を出しました。その骨子は下記の通りです。
「プラスチック包装容器は汎用性、柔軟性をもつことから、花王製品において重要な役割を果たしています。一方で、プラスチックの過度な使用は地球環境への影響が懸念されるため、花王にとっても、また生活者にとっても解決すべ共通の課題となっています」
具体的には、Reduce(減らす) Replace(置き換える)、Reuse(再利用する) 、Recyle(リサイクルする)の「4R」を打ち出し、プラスチックごみの削減を目指すと宣言しました。
この宣言をしたころ、澤田社長の一言がありました。もちろんアイキャッチシールは、大事なマーケティングツールなので、事業部門からは喧々囂々(けんけんごうごう)があったそうです。消費者に情報が伝えるために代替方法も見つけなければならず、「すぐにはできない」という意見も出ました。
「だったら勇気をもってやろう」
「だったら勇気をもってやろう」
同社の酒井真悟・事業ESG推進部長は「シールを止めたら売上高が減るかもしれない。でも減るかどうかは実証できない。『だったら勇気をもってやろう』と呼び掛けました」と振り返ります。すでにシールの2割は止めることができ、2020年末には7割減らせる見込みです。
武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事。特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長。特定非営利活動法人「街角に音楽を」理事 執筆記事一覧