廃材が美しい家具に 震災の傷を癒す

■世界のソーシャルビジネス アジア・オセアニア編 ニュージーランド

シンプルなデザインでありながら、存在感のある、「リキンドル」の家具。その美しい姿からは想像もできないことに、これらはすべて廃材から作られている。カンタベリー地方大震災後、ニュージーランド国内では、家の取り壊しの際に出る廃材が増えている。(ニュープリマス=クローディアー真理)

少しの無駄も出さぬよう、木の切れ端を組み合わせて作られたサイドテーブル。素材は貴重な原生樹リムだ ⒸLaura Forest

幼い頃から、リキンドルの創始者・ジュリエット・アーノットさんは、農場経営者の両親に「木」は生活上あらゆる面で役立つこと、何においても無駄は良くないことを教えられてきた。そんな彼女は、ゴミ処理場で山のように積まれた廃材を目にし、ショックを受ける。「何とかしなくては」と、家具を作ることを思い付く。これが、リキンドルのスタートだ。リキンドルには、「再燃させる」という意味がある。

値段は、イスが1脚322NZドル(約2万5千円)から、スツールが300NZドル(約2万3千円)から、テーブルが437NZドル(約3万3千円)から、ブレスレットが58NZドル(約4400円)からだ。

リキンドルのイスに座った創始者、ジュリエットさん ⒸLaura Forest

クライストチャーチ市内にあるショップとネットショップで販売され、個人やカフェなどのビジネスが顧客だ。利益は木工職人の育成とスキルアップ、コミュニティー向けの廃材利用法の指導、同様の趣旨の他プロジェクトの支援などに、再投資される。

リキンドルの商品は、プロの職人の手によるものだが、材料に適した廃材を探し、選定、回収するのは、青少年グループを中心としたボランティアが行っている。彼らはこの作業を通して、実用的なスキルの習得に加え、自己発見や自信を付ける機会を得ている。

「再生」が人の心を救う

mari

クローディアー 真理・ニュージーランド

1998年よりニュージーランド在住。東京での編集者としての経験を生かし、地元日本語月刊誌の編集職を経て、仲間と各種メディアを扱う会社を創設。日本語季刊誌を発行するかたわら、ニュージーランド航空や政府観光局の媒体などに寄稿する。2003年よりフリーランス。得意分野は環境、先住民、移民、動物保護、ビジネス、文化、教育など。近年は他の英語圏の国々の情報も取材・発信する。執筆記事一覧

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