B級をA級価格で買取り

黒檀の危機を知ったテイラー・ギターは2011年、黒檀取引の改善に乗り出した。まずは黒檀を卸していたスペインの企業との合弁で、カメルーンの木材加工工場を買収。伐採の認可システムを強化して、違法木材を排除し、合法に認可を得て切った木材だけを受け入れる体制を整えた。
そうしたなかで、テイラー・ギターズの共同創立者ボブ・テイラー氏は、買収した加工工場に黒檀を納入している伐採業者から「B級の木は使えない」という嘆きを聞いた。 B級の木はA級の5分の1の値段にしかならず、工場まで運搬するコストが出せない。そのため伐採業者は、B級材をそのまま放置しているという。A級の木は10本に1本しかなく、伐採した9割の黒檀が無駄に切り倒されていたのだ。
A級とB級の違いは「色」。A級は、均等に真っ黒でなければならない。材質の違いはないが、少しでも灰色の部分があったり、まだらが入っていたりすると、B級とみなされてしまう。
そこで、テイラー氏は伐採業者からB級材をA級と同じ価格で買い取ることを決めた。
テイラー氏は、「B級の材を使っても、風合いの美しさとしてアピールすることもできるだろう」と言う。
テイラー・ギターズは、米国国務省から、海外において「良きコーポレート・シチズン」としての活動を行った米国企業に贈られる「コーポレート・エクセレンス」を2013年度に受賞した。
こだわりのギターメーカーの創立者は、ギターを愛するのと同じこだわりでギターの材料を愛し、材料を育む環境を愛することによって、楽器業界の慣習を変えようとしている。そのこだわりは、ギターの品質やブランドイメージに昇華されて、ファンの心をつかんでいる。
*雑誌オルタナ44号(2016年12月16日発売)「世界のソーシャルビジネス」から転載