2016年に仏ビオセボンと共同出資でビオセボン・ジャポンを設立したイオンは、創業者ティエリー・ブリソー氏の過去を知っていたのだろうか。パリにオーガニック専門店が多々ある中、なぜビオセボンを提携先に選んだのか。パリのオーガニック市場を見ると、ビオセボンしか選択肢がなかったのではないかと思える。(在パリ編集委員・羽生のり子)

イオンはなぜ提携先にビオセボンを選んだか

フランス国内のビオセボン店舗

イオンがビオセボンと提携したのは、ビオセボンを訪れたイオンの岡田元也社長(当時)が惚れ込んだからだという。確かに店舗デザインは目を引く。しかし、取扱商品は競合店とかなり重なっており、他店より高めの商品も多い。経営者が気に入っただけでは提携には結びつかない。他社と提携する可能性はなかったのか。

パリの四大オーガニック専門店のトップ、「ビオコープ」はフランス全土に500店以上ある、生産者、消費者、店舗が作る協同組合だ。次に大きい「ラヴィ・クレール」は長い間、自社ブランドの製品のみを販売していた。しかし、競合店が増え、売れ行きが落ちる中、2016年ごろに店舗デザインを変えてイメージを一新した。現在の店舗数は320店以上ある。

三番手の「ナチュラリア」も200店以上を展開する。親会社はスーパー「モノプリ」で、モノプリはスーパーのカジノグループの傘下にある。ビオセボン(約120店)は仏オーガニック専門チェーンとしてパリで四番手だ。

協同組合系は経営形態が通常のスーパーと違うので、提携は問題外だ。ラヴィ・クレールは当時、変革の過渡期にあり、店舗の見栄えは良くなかった。また、自社ブランド品が多いので、提携しても仕入れる商品が限られる。

ナチュラリアと提携するには親会社と交渉が必要な上、親会社の日本進出を誘発するきっかけにもなりかねない。残るのはビオセボンだけだ。そう考えると、交渉できるのはビオセボンしかなかったと推測される。

日本のビオセボン1号店は、同じくイオンが提携したフランス発の冷凍食品店「ピカール」とともに16年12月、東京・麻布十番に開店した。フランスからオープニングに駆けつけたのはピカールのフィリップ・ダイエ社長と、ビオセボンからは社長ではなく創業者のティエリー・ブリソー氏だった。

フランスでは決して表に出ないブリソー氏が日本では前面に出て、記者会見も行った。イオンの交渉相手は最初からブリソー氏だったのではないだろうか。

「ビオセボンをコントロールする意図はない」

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