昨年5月、新代表に就任した多摩大学経営情報学部教授でもある松本祐一さんは、実はこのころから理事などの立場で事業構造の転換にかかわっています。その経験があるからこそ、組織を理解し、愛着も湧いてきたに違いありません。戦略ミーティングの合宿にも参加し、メンタルモデル・チェンジ、ビジネスモデル・チェンジに関わりました。
組織の変貌ぶりは2012年と2018年で比べてみると一目瞭然です。
◇自主事業比率 10%→70%
◇理事・監事の平均年齢 62.2歳→45.7歳(中心が70代→30~40代)
◇モデルチェンジにかけた時間 8年
このように結果的に世代交代をスムーズに進めることができたNPOサポートセンターの事例を検証すると、上手な世代交代に必要なのは、教訓を含めて次のようにまとめることができるのではないかと思います。
① 新代表にふさわしい貴重な人材の発掘
松本さんは2017年に代表就任を打診された時は断ったそうですが、学生時代に国境なき医師団に関わるなどNPO業界の経験が豊富な一方、大学教授として経営にも詳しい貴重な人材です。これはと思う人を発掘し、早めに就任を働きかけることが重要です。
② 就任までに事業の改革を
内部昇格にしろ、外部からの招聘にしろ、経営が思わしくないまま新代表に引き継ぐのは避けるべきでしょう。NPOサポートセンターの場合、時代に合ったメンタルモデル、ビジネスモデルのイノベーションに8年という歳月をかけています。入念な準備と思い切った改革が代表交代のキーポイントです。
③ 代表候補の関与を段階的に
ある日突然、新代表を任されてもとまどいが大きいばかりです。松本さんの場合は、コンサルタント的な立場から理事へと少しずつ関与の度合いを強めながら、組織の問題点を理解し、一緒に改革に取り組みました。そのことで新代表就任への心の準備ができたことが大きかったようです。
NPOによって事情は異なるでしょうが、このようなNPOサポートセンターの成功体験は貴重です。世代交代に悩んでいるNPOは、是非参考にしていただきたいと思います。 (完)