コロナで増える密猟、日本人ガイドが危機訴え

新型コロナで旅行者が7割減に

そうしたなか、新型コロナウイルスの感染拡大はクルーガー国立公園の環境保全プロジェクトにも大きな影響を与えた。

南アフリカの観光業はGDP全体の8.6%、321億ドルを占める(2018年)。しかし、2020年以降、新型ウイルスで海外旅行者が減少し、観光業の収入が落ち込んだ。サファリツアー予約サイト「サファリブッキングス」の調査では、調査に協力した294人のツアー担当者のうち9割が「新型ウイルスの影響で予約数が75%減った」と回答した。

太田さんが参加する環境保護団体も活動を休止し、再開の目処は立っていない。太田さんが協同していた環境保護団体の運営費用の多くは、アフリカの大手旅行会社が賄っており、コロナの影響を受けて団体への資金は大幅に減った。

環境保護団体の資金が激減し、自然保護区内で人の移動も減った。ロックダウン期間中、サイの密猟が半減した一方で、ブッシュミート(食用のための野生生物)を狙う密猟が増加したという。

「感染拡大前までは、私たちサファリガイドや旅行客がいて、いつも人の動きがあり、密猟者にとっては密猟をしにくい環境でした。私が住むクルーガーでは、多くの人が観光業に従事しており、大量の失業者がでました。とりわけ、生活が困難になった失業者がブッシュミートを狙った密猟を行う事例が増えています」(太田さん)

太田さんが主催する「バーチャルサファリ」では、画面越しに生き生きとした動物たちの姿を見ることができる

密猟を取り締まる活動を行う環境保護団体の活動資金も限られ、サファリ業界が厳しい状況だからこそ、太田さんは今できることとして2020年8月からバーチャルサファリを開催した。映像制作会社と連携し、世界初となるオンラインでの日本語ガイドを行う。

10月24日の無料版バーチャルサファリは、1時間、日本に住む参加者168人をYouTubeの動画配信でつないだ。11月8日は2時間の有料版を開催する。

なぜ太田さんは、密猟などサバンナの諸課題に取り組むのか。

「幼い頃からの目標であった動物保護についてもっと学びたいと思い、アフリカでボランティアに参加したのがきっかけです。初めてのアフリカの大自然に圧倒されると同時に、この繊細で美しい世界が人間の活動のせいで危機的状況にあることを目の当たりにし、ショックを受けました」

「日本での暮らしの中では気づきにくいことが、アフリカのサバンナで生活していると日々現実に起きているということを思い知らされます。日本人サファリガイドとして、日本の暮らす人にももっと興味を持ってもらえるように、身近に感じてもらえるように、アフリカから活動し続けたいと思っています」と意気込みをみせた。

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もう世界に5500頭しかいないクロサイ。 このちょこんと生えてる角がアジアでは漢方薬や嗜好品として超高価格で取引されるため、密猟の餌食となってしまっています? コロナでロックダウンになってからは、密猟件数が特に増えているそうです。 海外の観光客がゼロになり、どのロッジも閉鎖。 普段なら私たちサファリガイドがサバンナを毎日走り回ってるから密猟者にとってはやりにくいのに、今はサバンナの人の動きが一気に減っているから格好のチャンス。 ロックダウン初日から毎日のようにサイが殺されています。 運営資金を観光に頼りきっている保護団体たちは、今は密猟と闘うレンジャーの活動資金も中々入ってこない状況です… 観光が環境に悪影響を与えてしまっているケースもあるけれど、南アフリカの動物たちは観光が絶対に必要です! 本当にいち早く観光業復活してほしい? コロナが落ち着いて国際便がまた南アに飛ぶようになったら、是非みなさんサファリしに遊びにいらしてください??❤️ .

Yuka Ota(@yukaonsafari)がシェアした投稿 – 2020年 5月9日午前4時26分PDT

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