企業のパーパスは「人々の幸福への貢献」英教授

2019年1月、投資運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは「すべての企業はパーパスを持つ必要がある。パーパスは利益の追求だけでなく利益を達成するための活力になる」と説いた。

19年の8月には米国の主要企業経営者団体ビジネス・ラウンドテーブルが「株主第一主義を見直し、顧客、従業員、取引先、地域社会、株主など全てのステークホルダーの利益を尊重した事業運営に取り組む」との声明を出した。

私が考える企業のパーパス(存在意義、目的)は、単に利益を生み出すことではない。個人、社会、自然界が直面する問題の解決策を企業の戦略に組み込み、人々の信頼を増やし、利益が出る形で人々の幸福に貢献することだ。

オックスフォード大で私たちは、企業のパーパス達成の為のキーワードを「スコア(SCORE)・フレームワーク」と名づけている。

SCOREは、Simplify(パーパスを単純化し明確化する)、Connect(パーパスを戦略に結びつける、当事者全員に結びつける)、Ownership(組織全体に浸透させる、一人ひとりがパーパスのオーナーであることを納得させる)、Reward(報酬をパーパスに対しての評価とする)、Exemplify(パーパスの実施例を示す)を意味する。

一例を挙げるとデンマークの製薬会社ノボノルディスクは、パーパスを単なる「2型糖尿病の治療薬インスリン薬の製造」から「2型糖尿病患者の治療への寄与」、さらには「2型糖尿病の予防」に変えた。医療従事者、病院、大学と世界中で協力し、信頼関係を作り「2型糖尿病の予防」という人間の幸福への貢献に取り組んでいる。

繰り返すが、企業のパーパス推進の要諦は、明確な目標を持ち、人や地球の抱える課題に対し、信頼関係を築き、利益が出る形で解決策を提示・実践することだ。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #パーパス

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