コミュニティデザインに「場づくり」の新たなうねりが起きている。従来は、主に地域の課題解決のためのものだったが、ミレニアル世代による独自のコミュニティ形成が始まっている。単に同世代の人々が寄り集まることではない。様々な人たちが自分の可能性を伸ばしたり、一人ではできないことを達成する具体的な仕掛けだ。近年、日本全国で同時多発的に80カ所以上にのぼる「場」が生まれている。(オルタナ編集委員・高馬卓史)
ビジョンや目的などに固執しない
「場づくり」とは「小さくてやわらかい社会変革ではないのか」。そう語るのは、兵庫県尼崎市を拠点に数々の場づくりを手がけ、2020年4月に「場づくりという冒険―いかしあうつながりを編み直す―」という著書を世に出した藤本遼氏(1990年生れ)だ。
従来のコミュニティデザインは、主に町おこしといった地域の課題解決のためのものだったが、1980年代から90年代半ばに生まれた「ミレニアル世代」を中心とした場づくりが、独自のコミュニティを形成し始めている。
単に同世代が寄り集まるということではない。「場づくりとは、さまざまな人たちが自分の可能性を伸ばしたり、お互いの力を出し合って一人ではできないことを達成したり、自分たちが自分たちのままでいられる安全地帯をつくったり、だれも想像がつかなかったような景色を生み出したりするために行う具体的な仕掛けのこと」と藤本氏は言う。
また、「ビジョンや目的に固執するあまり今を大切にできなければ意味がない。意義や価値に固執するあまり楽しむことができなければ意味がない。課題を解決することも重要だが、同様に新しい価値観や行動様式をつくること、別の(社会)構造をデザインすることも大切」(藤本氏)とも語る。