吉川貴盛・元農水相が鶏卵生産大手から500万円の現金を授受したとされる疑惑で、背景には世界的な潮流である「アニマルウェルフェア(動物福祉)問題」があることが分かった。東京五輪に先立ち、元オリンピック選手らが動物福祉に配慮し、ケージ飼いの卵をやめ平飼いの卵のみを提供するように要望するなど、動物福祉への関心が高まっていた。だが、平飼いはコストが掛かるため、日本の養鶏業界が反対運動を繰り広げていた。(オルタナS編集長=池田 真隆)
動物の健康より養鶏業界に配慮
「世界ではケージ飼育から平飼いへの切り替えが進んでいるのに日本は養鶏業界に配慮してアニマルウェルフェアの国際基準を下げるための反対意見を出し続けている。アニマルウェルフェアの国際基準のドラフト案に日本の意見の一部が採用されているので、このまま決まってしまうことは大変残念なことだ」
こう語るのは動物保護団体の認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事の岡田千尋さん。彼女が指摘した「ドラフト案」とは、1924年にフランス・パリで発足した政府間機関の「国際獣疫事務局(OIE)」で検討中の国際規約のことを指す。
OIEでは2017年から採鶏卵に関するアニマルウェルフェアの国際規約を検討しており、現在、加盟する182の国と地域から出された意見を集約して、ドラフト案としてまとめている。このドラフト案は2021年5月のOIE総会で採択する予定だ。
ここでアニマルウェルフェアについて説明する。アニマルウェルフェアとは、動物本来の欲求を妨げることのないように適正に扱うことを科学的に定めた原則だ。
「飢餓と渇きからの自由」
「外傷と疾病からの自由」
「肉体的苦痛と不快からの自由」
「恐怖や不安、抑圧からの自由」
「正常な行動ができる自由」
――の5つの基本原則からなる。