「地球の体調変化」に耳をすませる

北極圏の温暖化はシロクマの生存以上に人類の生存危機に直結しており、気候変動や異常気象のニュースは一見無関係に思える中東情勢とも深く連関している。(中東危機はさらにグローバルな投機マネーやブッシュ政権の“エコ”なバイオ燃料政策による「食料と燃料の競合」なども絡み、システム・リスクの連関を包括的に捉える思考が求められる。)

さて、2020年は夏の北極海氷が最小化した2012年に続く史上二番目の減り方だった。2013年末からの異常寒波をもたらした気候変動はラニーニャ現象との関わりも指摘されたが(西太平洋の暖水域からの熱がテレコネクションで極域に影響)、この面でも今年の状況に符号する。

鳥インフルエンザ早期爆発の一因として、欧州やシベリアからの渡り鳥の移動パターンや時期の変化があるとすれば、それも高緯度地域の気候変化と無縁ではないだろう(今年のシベリアの異常高温や森林火災も記憶に新しい)。

新型感染症の頻発、鳥インフルエンザひいては新型インフルエンザへの変異が野生生物の生息地である湿地や熱帯林の破壊と深く関係していることはよく知られるようになったが、こうした気候変動の側面もあわせて「地球の体調変化」に耳をすませてゆく必要がありそうだ。

もちろん検証には時間を要し、エビデンスが出てくるのは数年後かもしれない。だが、それを待っている猶予はない。コロナ対応の遅れからも教訓を得たように、予兆を「微分的」に捉えて思考と行動を変えてゆく柔軟性が人類全体に求められている。

(蛇足として付け加えれば、昨年末には奇しくも動物福祉関連の政治献金スキャンダルもあった。現代の食肉産業のあり方も、生態系破壊と並んで新型感染症発生の温床だ。「動物福祉」の問題も含めた“人間界に閉じないパートナーシップ”が問われている。)

shinichitakemura

竹村 眞一(京都芸術大学教授/オルタナ客員論説委員)

京都芸術大学教授、NPO法人ELP(Earth Literacy Program)代表理事、東京大学大学院・文化人類学博士課程修了。人類学的な視点から環境問題やIT社会を論じつつ、デジタル地球儀「触れる地球」の企画開発など独自の取り組みを進める。著者に『地球の目線』(PHP新書)など

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キーワード: #環境#脱炭素

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