ニュージーランドでは2018年10月から羊の病気予防のために臀部を切除する処置「ミュールシング」が禁止になった。動物愛護団体や消費者から批判を浴び、有名ブランドは切り替えを進めている。
ニュージーランドが法的禁止に踏み切ったミュールシングは、1929年に豪州で発案されて以来、豪州の牧羊業者を中心にハエウジ症予防策として定着した。発症すると羊が死ぬこともあるため、対策は不可欠だ。
ミュールシングは、羊を拘束し、糞尿が付き、ウジが発生しやすい臀部の皮膚と肉を専用の金属製のハサミで切除する。特にメリノ種は毛をより多く採取するために品種改良され、体にしわがあり、ハエウジ症にかかりやすい。処置後、臀部の皮膚はなめらかに生え代わるため、病気を防ぐことができる。
通常、生後6カ月未満の子羊が対象で、麻酔も、処置後の傷の手当もなしに行われるため、羊は痛みとトラウマに苦しむと長年、動物愛護団体が反対してきた。特に米国に本部を置く「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」は、ミュールシングを含む、羊への虐待行為に対する抗議活動を世界規模で展開している。